2012年10月 鑑賞記録

10月
◯10日(水)五街道雲助一門会  にぎわい座
◯11日(木)長講三人の会 さん喬、権太楼、桃太郎  日本橋劇場
◯14日(日)のれん噺 おやじ四人衆  お江戸日本橋亭
◯17日(水)鈴本 昼席  主任 川柳  鈴本演芸場
◯22日(月)人形町らくだ亭 志ん輔、小満ん、南喬  日本橋劇場
◯23日(火)さん喬十八番集成 第一夜  日本橋劇場
◯31日(水)劇団四季 ウェストサイド物語  四季劇場[秋]




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劇団四季 ウェストサイド物語 10/31

10月31日(水)ウェストサイド物語 四季劇場[秋]

初日マチネ。
そろそろ観たいなぁ、と思っていましたら案内葉書が届き、
先行予約開始日(9/8)に早速電話を入れたところ、すぐに繋がるという幸運。
初日の良席を入手することが出来ました。

ベルナルドは?マリアは?誰が出演するのか非常に楽しみです。

主な出演者は次の通り。
◯リフ 岩崎晋也 ◯トニー 阿久津陽一郎 ◯ベルナルド 加藤敬二
◯マリア 笠松はる ◯アニタ 増本 藍 ◯チノ 斎藤准一郎 ◯ドック 石波義人
◯コンダクター 平田英夫


笠松の歌声が圧倒的。それとアニタ役の増本が歌、踊り、演技に存在感を示してくれました。

男性陣はやはり加藤。
身のこなし、踊り、ともに若手を凌駕するしなやかさ。
迫力ありましたねぇ~。

阿久津も素晴らしかった。

リフ役の岩崎の姿も好かったなぁ。
声の通りがやや残念ですが、舞台を壊す程ではありません。気になるというぐらいの感じ。

また、近頃の四季公演にしては珍しい「生演奏」なのが嬉しいですね。

『オペラ座の怪人』は劇中劇でコンダクターとの絡みがあるので生演奏が残りましたが、
他演目は殆どプレスコアリングに切り替わっています。
そんな中、生演奏は非常に嬉しい。
群像劇で大勢が交互に科白を喋りますから、生でないと歌い出しが合わないことも出てきそうですものね。

いやぁ~好かったなぁ。
もう一度と言わず、数回観たい感じ。

家人と二人、『トゥナイト』を背に家路へ。





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さん喬十八番集成 第一夜 10/23

10月23日(火)さん喬十八番集成 第一夜 日本橋劇場

新しく始まったさん喬師匠の会。
会の命名から、従来の集大成、とも読めますし、
老年期へ向けて根多を絞って完成させて行く、とも解釈出来ます。
さぁ、どんな感じなのかまずは一見。
家人と連れ立って日本橋劇場へやって参りました。

早めに到着して待機していましたら、係の方が『先にチケットを切りましょう』と半券と引き換えにパンフレットを手渡してくれました。
それを見てびっくり。
挙げられた十の演目から二つを選び投票、その投票数の上位二演目を口演するというのです。

十の演目は次の通り。
1二番煎じ 2宿屋の仇討 3文七元結 4福禄寿 5芝浜 6掛取り 7寝床 8木乃伊取り 9お直し 10夢金
さて、皆さん何に投票されたのかな?

◆柳家さん坊 『道灌』

◆柳家喬之進 『のめる』
愉し気に調子よく噺を進めます。
面白かったなぁ。

◆柳家さん喬 『たちきり』
まず、演目の投票について。
結果を集計して『次回の』演目を決めるとのこと。
なるほどそうかぁ。
まぁ、今夜あたりかなり涼しいと言っても『掛取り』は早すぎるものなぁ。
てっきり今夜の投票が「即日開票」されて反映されるのかと、勘違いしておりました。

好みの演目に丸をつけ提出してしまったので用紙は手元にありませんが
残しておこうと撮影した文面にちゃんと『次回は』と書いてある。
早とちり恥ずかしい~、老眼鏡がそろそろ必要かも・・・。

またこの会について「十八番」の語源の蘊蓄を語りながら、根多おろしも含めて考えている旨説明がありました。
という訳で、修行時代の「悪戯」「遊び」の枕(これ長かったなぁ)を経て、花柳界の花代、線香の説明、そして『たちきり』へ。

芸者と若旦那の相惚れを強調する為にか、小糸が女将に問う『おかあさん、若旦那へお手紙をお出ししてよろしゅうございますか』の言葉を数回(八十日間あまり、朝夕に手紙を出すのですから、実際の小糸と女将の会話ではこうして繰り返されたのでしょうけれども)繰り返します。
ちと、くどかったですねぇ。

これ、直接話法で女将が小糸の口真似を交えて若旦那へ説明している場面な訳です。
若旦那を前にして、女将がこれだけの繰り返しを小糸の調子でするのは有り得ないでしょう。不自然な感じでした。

あと女将はもっと淡々としていなければ、泣かせにもっていけないのじゃぁないかなぁ。
「小糸の最期を淡々と語る毅然とした風情の女将」の方が、私は入っていけるのですが・・・。
つまり「小糸の口真似をしている女将」と「地で若旦那と話す女将」とは、もっとはっきり調子が変わらないとおかしいと思うのですがねぇ。
女将があまりに愚痴っぽいと噺が壊れますね。

登場人物の描写、演じ分けは流石の至芸と感じます、とくに若旦那の表情の移り変わりはお見事でした。

好かったけれど、長かったなぁ~。

~仲 入~

◆柳家さん喬 『井戸の茶碗』
黒紋付で登場。
これは侍の噺だなぁ、何だろう。と思案しておりましたら屑屋の枕を振って『井戸の茶碗』へ。
一席目の『たちきり』に全力を出したのか肩の力の抜けた様子。
喬太郎師を彷彿させるくすぐりも入れて愉しく噺を進めました。

高木作左衛門が窓から笊を降ろして仏像を買うのではなく、
初手から屑屋清兵衛を座敷に招き入れるのが目新しかったですね。

また、この場面と演出上は繋がるのでしょうけれども
枕で屑屋の身分について仕込んで、下げにつながる最後半で
『あたくしの様な者がお侍さんの仲立、仲人をしてよろしゅうございますか』『孫子の代までの誉れで・・・』とやっていました。

屑屋に力点を置く意図は分かりますが
正直清兵衛の人柄や、高木作左衛門、千代田卜斎が清兵衛に寄せる信頼感などは、それこそ先程の『たちきり』の様に噺の中の会話などで描写すべきことなのではないかなぁ。
言わずもがなの蛇足、駄目押しの演出と感じました。

この描写、言葉がなければ屑屋清兵衛が端なる使い走りになってしまう、と感ずるならば、それは噺の組立に問題があるのだと思います。



跳ねて外へ出てみれば、相当降ったのでしょう路面に水溜まり。一面に光っています。
中で聴いているうちに降ってくれて良かった、など家人と言い合いながら家路へ。





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第44回人形町らくだ亭 10/22

10月22日(月)第44回人形町らくだ亭 日本橋劇場

今夜の主任は志ん輔師『子は鎹』
小満ん師が『忍三重』と珍しい噺。
客演は桂南喬師『佐野山』

◆林家扇 『金明竹』

◆古今亭志ん吉 『代脈』
相当さらって来た印象。
こうしたくすっと笑う系統の噺は、小声の会話を挟んだりした方がより効果的かもしれませんね。
口跡も好く上手に丁寧に演じていただけに、時として一本調子になりがちなのがやや残念。

◆桂南喬 『佐野山』
今夜の演目を見てのことでしょうか、
より面白おかしく喋って笑いを引き出しました。
好演。

◆柳家小満ん 『忍三重』
冒頭、下座に忍三重を弾かせ、夜の闇を表す音だと説明しました。
別名をひぐらし三重とも。
また「黙り」についても「暗闇の中で探る様子、場面」と予備知識を授けてくれました。

主人公の旅芸人夫婦(と言ってもまぁ素人みたいなもの)が
落語的発想を実行するのが愉しいですね。
恩人を助けたい一念から芝居一幕。
客となる高山の料理屋魚七の主人もまた粋な了簡で洒落芝居の後見をするという
言わば「出てくる人皆善人」の物語。
面白かったですねぇ。小満ん師の味を充分楽しめました。

~仲 入~

◆古今亭志ん輔 『子は鎹』
私にとっては聞き慣れた志ん生師型の『子は鎹』、素晴らしい出来でした。

志ん輔師苦心の工夫が効果を上げたのは熊の断酒決心のくだり。
ここの演出は凄かったなぁ。
今の孤独の原因は酒だったと思い至った熊五郎、手に持った酒で満たされている升を下へ置きます。
所謂、兜で呑む様子の描写ですが、ここは見応えありました。
言葉のみならず細かな仕種によって熊の心情を如実に表現してくれましたね。

饅頭屋店頭で蒸籠の湯気を見て涙を・・・の場面、
流石に「清正公様の生まれ変わり」はもう通用しないと判断したか、
「饅頭に恨みがあるのじゃないか、なんて・・・」と言い換えていましたが、ここは元の「清正公様」で好いように思いました。
説明的になると、面白みがなくなります。

金坊と母親の描き込み、親の子を思う気持ちが良く表れていましたねぇ。
五十銭の出所をめぐるやりとりは、まさに「志ん輔師、熱演」と言ったところ。

いい『子別れ』だったなぁ。


いやぁ、好かった好かった。
大満足の人形町らくだ亭、次回は師走二十一日。





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鈴本10中昼 10/17

10月17日(水)鈴本演芸場 昼席

『川柳師の芝居ならば一日は観なけりゃぁならぬ』と独り決めして鈴本昼席にやって参りました。
私は末広2下昼(2/23)以来、八ヶ月振りの川柳師匠の芝居です。

三遊亭しあわせ 子ほめ
古今亭志ん公 真田小僧
松旭斎美智・美登 マジック
柳家喜多八 小言念仏
鈴々舎馬風 漫談
すず風にゃん子・金魚 漫 才
林家正蔵 新聞記事
桃月庵白酒 金明竹
柳家紫文 三味線漫談
古今亭志ん輔 岸柳島

~仲 入~

ストレート松浦 ジャグリング
古今亭菊之丞 紙入れ
入船亭扇遊 家見舞
大瀬ゆめじ・うたじ 漫 才
川柳川柳 ガーコン~ラ・マラゲーニャ

◆志ん公 『真田小僧』
良い声で調子よく噺を進めました。
「家の真田も薩摩へ落ちた」まできちんと。
面白かったなぁ。

◆喜多八 『小言念仏』
お馴染みの立ち食い蕎麦の枕から。
聴きながら「まぁ季節も季節だし、この後に松茸が来て『筍』だろう」
「松茸の枕って便利だなぁ、『筍』が一年中掛けられるから」などと思いつつ、そのつもりで構えていましたら
松茸へは行かず、お年寄りの話題から『小言念仏』へ。

寄席の尺でお念仏が短めだったのが惜しい。
愉しかっただけにいきなり噺へ入って貰って、
たっぷりのお念仏の『小言念仏』を聴きたかったですね。

◆正蔵 『新聞記事』
白酒師と出番交代。
手の内の噺で表情や細かい仕種も決まっていました。

◆白酒 『金明竹』
出番の交代は正蔵師の都合に合わせて、と説明して学校寄席の話題へ入りかけましたが、
時間のせいか、或いは学校寄席の話題で思いついて腹にあった演目を替えたのか、
枕を端折り気味に『金明竹』へ入りました。
今日の客席はやや温まりが良くなかった様に思いますが、ここでかなりほぐれた印象。
白酒師の与太郎は、どの噺でも素晴らしい存在感ですねぇ。お見事。

◆紫文 三味線漫談
毎度のことですが何番目かの小咄の繋ぎに老松を弾きます。
それを聴いた私がしんみりしちゃうのも、またいつものこと。

◆志ん輔 『岸柳島』
古今亭のお家芸を掛けてきました。
若侍、船頭、屑屋、半畳を入れる二人の町人、そして老旗本をきちんと演じ分け、江戸へ連れて行ってくれました。
客席で聴いている私も同じ船に乗り合わせた様な感覚に陥り、固唾をのんで展開を見守る、そのくらいの雰囲気まで作りましたね。迫力満点の高座。
好演。

◆菊之丞 『紙入れ』
十八番を表情豊かに。
最後半の女将の口調がいつもよりもくどかった様に思いましたが、
わざと臭く押したのかな?

◆扇遊 『家見舞』
あまり好みではない噺なのですが
今日の扇遊師ぐらいの演出ならば、気持ちよく聴くことが出来ます。
そう考えるとこの『家見舞』、難しい噺なんですね。

◆ゆめじ・うたじ 漫 才
根多はお馴染みの『箸』。
『降りが酷くなるので帰るなら今のうち』と
(これもまぁ天候の好くない時にする定番の掴みなのですが)やったところ、
一人のお客様が前のめり気味に高座を横切って、本当に出ていっちゃった。
『まだ降ってませんよ~』など声掛けしたけれども、そのお爺さんは戻りません。

次が、主任ですからねぇ。
どうしちゃったのだろう。
今日は根多よりも
『私たちの言うこと、真に受けないで下さい』との言葉の方で大笑い。

◆川柳 『ガーコン』
怪我をした足が癒えず正座をしにくいとのこと、釈台を前にしての高座。
その釈台の為にマイクが遠くなったせか、喋り声がやや小さく感じられましたが
歌声は変わらず元気なので安心しました。
何十回聴いても大笑いしちゃいますね『ガーコン』。
素晴らしい高座でした。

一旦下がりソンブレロ、サロッペ姿で再登場。
『ラ・マラゲーニャ』
こちらも堪能しました。

いやぁ~、好かった好かった。


跳ねて外はまだ傘の要らぬ程度。
広小路付近で少し強くなって来たので急ぎ足になり家路へ。





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古今亭圓菊師匠逝去

10月13日、古今亭圓菊師匠が亡くなられました。
在りし日の高座で私の記憶に残っているのは
『星野屋』『唐茄子屋政談』あたり。
独特の舞うような仕種と圓菊節が思い出されます。

最後のお弟子さん文菊師匠の真打昇進を見届けて逝かれたのが
残された者への師の最期の思いやりではなかったでしょうか。

昨日「のれん噺 おやじ四人衆」に於いても
雲助師、喜多八師が圓菊師匠を偲び
ほんのわずかな時間ですがその高座を再現してくれました。
笑いながら少し涙が出ました。
圓菊師の個性的な高座、きっと私の記憶にいつまでも残ると思います。

ご冥福をお祈りします。

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のれん噺 おやじ四人衆 10/14

10月14日(日)第32回 のれん噺 おやじ四人衆 お江戸日本橋亭

九識の会改メ「のれん噺 おやじ四人衆」。
今回から一朝師が加わって会の名前を改めたのですね。
回数を重ねた、歴史ある落語会です。

私この会は初見参。
雲助師の軽い噺を聴きたいなぁ、というのも来た動機の一つなのですが
志ん橋師の『芝浜』に大きな興味を惹かれ、家人と連れ立ってやって参りました。

今年の初『芝浜』。
そう言えば、昨年末は「これでもか」とばかりに『芝浜』に当たったなぁ。

◆春風亭朝呂久 『猫と金魚』
来月一日に二つ目昇進とのこと。
おめでとう!
いままでは達者な前座さん、と見ていましたが
今後は一人の芸人として
その芸で客席を楽しませて下さい。

◆五街道雲助 『商売根問』
亡くなった圓菊師匠の思い出話をしながら
主任の志ん橋師が浅草昼席で披露目に出演している為、
今日は前方の三人が出来るだけ伸ばす必要があると説明しました。
『なにせ私の噺なんぞ十五分で終わってしまうン』

入りの『隠居さん、こんにちは』の発声を上方風の抑揚にして
『なんだってそんな上方落語みたいな入り方するんだい?』
『いや、この方が噺の出どころが分かっていいんじゃないかと・・・』
と会話を挟み、客席に蘊蓄を授けてくれました。

雀、鶯、河童。
雀と鶯は『鷺とり』の前段として聴くことがありますが、
河童までとなりますと、雲助師でしか聴いたことがないかもしれません。

期待通りの愉しい高座に大満足。
面白かったなぁ。

◆柳家喜多八 『一つ穴』
『時間伸ばすったって誰かみたいに枕だらだら喋る訳にもいかないし・・・』には大笑い。
『今頃口上じゃないですかぁ?』との言葉にふと時計を見ましたら、
ちょうど三時だったのを覚えています。

『こういう時は誰かの悪口が一番いい』と言いつつ、それがまた続かないのが喜多八師のいいところですね。

志ん生師のくすぐりを使うにあたって
娘の美濃部美津子女史の許しを得た、など喋りながら噺へ入りました。

喜多八師らしい細かな人物描写で、
女中を含め三人の女性を面白おかしく演じ分けてくれました。
旦那と権助の描き込みも素晴らしかったなぁ。
特に、旦那が妾宅で女房を見て驚く様、これは喜多八師でしか出来ない描写でしょう。
好演。

~仲 入~

◆春風亭一朝 『雑俳』
今回から出演することになったので、先の三人同様、ひとつ可愛がって下さい。
など挨拶のうちにどうやら志ん橋師が楽屋入りした様子。すぐ噺へ入りました。

柳昇師の型はたまに耳にする機会がありますが、
なるほど啖呵の切れる一朝師だとこう来るか!
しゃきっとした『雑俳』、良かった!

◆古今亭志ん橋 『芝浜』
素晴らしい高座。
一時間に及ぶ長講でしたが、短く感じました。

三代目三木助師の演出は採らず、
魚河岸の夜明けの様子、財布を拾う顛末は、慌てて帰ってきた熊が女房へ語る形で描写します。
古今亭伝承の『芝浜』。

感心したのは魚熊の人物描写。

酒浸りの毎日の魚熊と、改心して仕事に精を出し始めた魚熊とは、はっきり違う人物になったことを見事に表現しました。
それも臭くなく、ごくさりげない気づかないくらいの差なのですが
見事な演出で、まさに斯くあるべきと得心した次第。

芸の伝承に繋がる部分だと思いますので敢えて細かくは言及しませんけれども、
非常に優れた描写でした。

三年目の大晦日、まだ長屋住まいながら掛取りも来ない穏やかな暮らしぶり。
この場面も、
風呂から帰ってきた熊の手拭いをさっと手にとって干す女房の仕種で
その平和な日々を鮮やかに表現します。

丁寧に丁寧に細かな描写を積み重ね、
夫婦の情愛をさり気なく私たちの目の前に再現してくれました。

最後半、下げに繋がる部分はかなり溜めた演出。
観ているこちらが先に唾を飲み込みました。

いやぁ、恐れ入りました。


去年あれほど続けて観ていた『芝浜』は何だったのだろう。
あれは「ホール芸」なんだなぁ。
大きな所作、大袈裟な抑揚。
寄席で観てもホールの芸だったのですね。

今日の志ん橋師の『芝浜』は座敷や寄席でこその『芝浜』。

素晴らしかったです。
感動しました。
文学ではない、また大泣かせに走らない「落語の芝浜」、堪能しました。


帰宅してふと、今日は皆さん口跡が良かったなぁ、と思っていましたが、うっかりしていました。
師匠方、江戸っ子四人衆なんですね。

この「のれん噺 おやじ四人衆」
次回は六月九日(日)とのこと。

忘れずにまた来たいなぁ。


蛇足:
これを書いていて思ったのですが
「おやじ四人衆」っての、今からでも「江戸っ子四人衆」にしちゃぁどうですかねぇ?





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長講三人の会 10/11

10月11日(木)長講三人の会 日本橋劇場

お久しぶりの長講三人の会。

前回は三月十五日でした。
桃太郎『死神』、権太楼『お化け長屋』、さん喬『おせつ徳三郎』。
桃太郎師『死神』は、最後にゴルゴ13が登場したんだな。

その前は・・・
昨年九月十五日、桃太郎『不動坊火焔』、さん喬『幾代餅』、権太楼『茶の湯』。
この時、権太楼師は噺の後半、下げに繋がる挿話を抜かしちゃったのだっけ。

変なことばかり覚えていますな。
(この記憶いささか怪しく、今夜配布されたパンフに昨年九月の記載はありません。
私が何か混同しているのかも。)

さぁ、お三人今夜はなにを掛けるのだろう、楽しみです。

◆柳家おじさん 『牛ほめ』

◆昔昔亭桃太郎 『茶の湯』
様々な話題を挟みながら愉しい高座。
桃太郎師独特の『茶の湯』に爆笑しました。

下げに掛かる「利休饅頭」のくだりで
『不味くてとても食べられないので、残りを袂に入れたのだが、油が着物に染みを作り始めた為、厠へ行って・・・』
という流れがきちんと伝わって来ませんでした。
そこだけ残念。

◆柳家さん喬 『子別れ(下)』
中をさらっと描いて『子は鎹』へ。
演者によって、上、中の挿話を同行する番頭さんに喋らせて説明する演出もある様ですが、
矢張りこうして「代表的場面を描写しつつ、粗筋をなぞる」方が、
聴き手側はより噺に入っていける感じがします。

亀ちゃんの『学級で靴履いていないのはあたいだけなんだぁ。ねぇ、この五十銭でズック買ってもいい?』なんてね
泣かせる科白、場面がそこここにあって、じわ~っと来ました。

「額の傷」「あそこの家からはお仕事を貰っているから」などの挿話は刈り込まれ、
学級(学校)で『子供は両親の下ですくすく育つものだと先生が言った』或いは、
上に書きましたズック靴の挿話等によって
母一人子一人の寂しさ、異なる環境に由来する子供社会での疎外感などを
丁寧に描き出しました。

さん喬師、亀ちゃんになりきっていましたね、お見事。

最後半、鰻屋の二階の三人の会話が堂々巡りになっているところへ
昨日の番頭さんが登場。
『いま廊下で話は聞いた』と仲を取り持って下げとなります。

この場面、女房が『勝手なことばかり言って』と、
恐らく離別以来初めてでありましょう、感情を爆発させ熊五郎を軽く責める演出なので、
仲を取り持つのが亀では役不足。
大人の第三者が登場しないと話がまとまらない訳です。
これはなかなか新鮮に感じました。

一つ、「玄翁」が最早解らないと見て「金槌」と言い換えたのかと思っていましたが、
志ん生師、圓生師の型だと金槌の様です。

素晴らしい『子別れ』でした。

~仲 入~

◆柳家権太楼 『うどん屋』
座について落ち着かない様子でもぞもぞと身体を小刻みに動かすものですから、
眩暈でも発症して大変なことになっているのではないか、と心配しました。

膝を痛めてしまったとのこと、今月二十二日に入院、手術なんだそうです。
いま辛いだろうなぁ。相当痛いのではないかしら。

「高座百遍」が信条の権太楼師らしく
今季あちこちで重ねて掛けている『うどん屋』をまた遣らせていただきたい、
と断って噺へ。

先代小さん師の十八番で、柳家の師匠方が冬場によく掛ける『うどん屋』。
喬太郎師で何度か聴いた記憶かありますが、さてさん喬師ではどうだったろう。

完成途中だと言っても、権太楼師の中でのことで
客席が『なるほど、途中ですね』なんて気づく水準の話ではありません。

ちょっと気になったのは、前半の酔っ払いとのやり取り。

今夜の権太楼師よりもむしろ先代小さん師版のほうが、
酔っ払いの登場している時間は長いのかもしれませんが、
権太楼師の口調だと酔っ払いの絡みがしつこく聞こえます。

「気のいい小父さんが祝い酒に酔った姿」に見えないんです。

もう少し刈り込んだ方が、私はより噺へ入り込める気がしました。

あと、細かいことですが
出されたうどんの土鍋の蓋を開けて、
その蓋は脇へ置き土鍋を左手に持って食べていました。

これは矢張り、置いた蓋の上へ土鍋を載せ、蓋ごと持って食べるのが本当ではないかしらん?
いまのいままで火に掛かっていた土鍋を、手で持てないでしょうから。

しかし権太楼師、熱心だなぁ。
以前、権太楼師の『百年目』に何度か続けて遭遇し、
『早く暑くならないかねぇ』と家人に愚痴ったことを思い出しました。
この『うどん屋』も得心いくまで何度も掛けて、十八番にして行くのでしょう。


今夜は『子別れ』に尽きるなぁ、と独りごちながら家路へ。





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五街道雲助一門会 10/10

10月10日(水)五街道雲助一門会 にぎわい座

『待ってました!』と声を掛けたくなりますね。
雲助師の高座は八月九日のにぎわい座独演会以来です。

更にまた、このところ特別興行が続いていましたので、
私が落ち着いた雰囲気で本寸法の噺を楽しむのも、ひと月振り。

家人は九月二十九日に白酒師を三席、
『短命』『錦の袈裟』『井戸の茶碗』とたっぷり聴いているので、余裕綽々の様子。
対してこちらは『早く席に着いて落語を聴きたいよぅ~!』と、
にぎわい座へ向かう歩調も速くなりがちに。

今夜は長い鑑賞歴を持つ友人も来場の筈。跳ねてからの談義も楽しみです。

◆柳家緑太 『たらちね』

◆隅田川馬石 『粗忽の使者』
このにぎわい座での一門会で雲助師が一度も主任を取っていないので
今夜は師匠が主任です、と出演順の紹介から。
枕らしい枕はなく噺へ入りました。

最初はつねる田中三太夫の顔が、
最後半では「留っこ」につねられる治武田治部右衛門の顔が、朱に染まります。
強情灸などでも見られる技ですが、今こうして顔色を操るのは
馬石師の他に志ん輔師ぐらいかしらん?
かつては人間国宝小さん師匠が得意にしていましたけれども。

馬石師の『粗忽の使者』は「留っこ」の飄々とした風情が印象的。
治部右衛門は「物忘れの激しい人」で、滑稽描写は抑えた演出です。
粗忽者と慌て者とは違うのでしょう。

珍しく下げで噛みかけましたが、あやういところで乗り切りました。

◆桃月庵白酒 『錦の袈裟』
随分早めに下がった、とまずは前方の馬石師をいじります。
なんでも馬石師、これから旅、それも故郷の兵庫だそうで、それで急いでいるとのことでした。
なるほどね。
最後に噛みかけたのも、理由がある訳ですね。

噺家の打上げ、新年会などの話題から、
「トルコ王」として私ですらその異名を知っている某師匠との吉原行の枕を振って
『錦の袈裟』へ。

このところよく遭遇しますな。
“桃月庵白酒と愉しい仲間たち”「我ら、雲助の弟子でござる」
(9/13・牛込箪笥区民ホール)の時にも書きましたけれど、
うむ、やはり与太郎の人物描写が際立っていますね、お見事。

~仲 入~

◆蜃気楼龍玉 『鮑熨斗』
古今亭のお家芸で龍玉師も手の内の
言わば十八番の噺なのですが、
今夜はその長尺版と言うか完全版をたっぷりと。
淡々とした高座ですが、龍玉師は登場人物の描き込みが的確なので、
聴いているこちらは知らず知らず噺に引き込まれているんです。
面白かったなぁ。

◆五街道雲助 『つづら』
これは珍しい。
端緒、子供の着物を縫い終わる場面での見事な運針、そして糸を結び、歯で切る丁寧な仕種で客席を前へ引き出しました。

成田へ金策に向かう亭主(由蔵)を、
由蔵の母と友達だったという、今は母親代わりの存在の近所のおばさんが呼び止めます。
この場面の二人の会話の調子と表情の変化、素晴らしかったですねぇ。

自ら招いた災厄の附けだ、仕方ない、と諦めたのか、
怒りを鎮め、
つづらを背負って質屋へ向かう由蔵。

言わば定法に沿って最低限の意趣返しを成し
さっぱりとした表情になっていきます。
(枕で仕込んだ「間男七両二分」がここで活きるのですよ、無駄がないなぁ。)

ここの気持ちの流れ、由蔵の胸の内の変化。

怒り~諦観~定法に則った解決~全てを水に流した清涼感、
目まぐるしく展開する心の中を、豊かな表情と口調で見事に伝えてくれました。

巧かったなぁ。
恐れ入りました。



跳ねて、「良かった」「巧かった」と鼎談を繰り広げ、
お互いに噺を反芻しながら再度楽しみました。

今夜は特に、聴いていて何かしらふわぁ~っとした、
らく~な気持ちになっていきました。
巧者揃いの寄席で、見事な繋ぎを見たような感覚です。

あぁ~、今夜もまたいい芝居だったなぁ~。





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プロフィール

喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)

Author:喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)
喜洛庵寄席桟敷へお越しいただきまして、ありがとう存じます。
寄席、落語会、舞台などの鑑賞記を綴って参ります。

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