2013年 3月 鑑賞記録

3月
◯ 4日(月)五街道雲助『お富與三郎』、隅田川馬石『名人長二』初 日
       お江戸日本橋亭
◯ 5日(火)五街道雲助『お富與三郎』、隅田川馬石『名人長二』二日目
       お江戸日本橋亭
◯ 7日(木)五街道雲助『お富與三郎』、隅田川馬石『名人長二』三日目
       お江戸日本橋亭
◯ 9日(土)らくご・古金亭  湯島天神参集殿
◯10日(日)五街道雲助『お富與三郎』、隅田川馬石『名人長二』四日目
       お江戸日本橋亭
◯12日(火)五街道雲助『お富與三郎』、隅田川馬石『名人長二』五日目
       お江戸日本橋亭
◯17日(日)五街道雲助『お富與三郎』、隅田川馬石『名人長二』千穐楽
       お江戸日本橋亭
◯20日(祝)鈴本 夜席  主任 馬石  鈴本演芸場
◯21日(木)鈴本 夜席  主任 志ん輔  鈴本演芸場
◯23日(土)圓朝に挑む! 圓太郎、米福、龍玉、こみち  国立演芸場

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圓朝に挑む! 3/23

 3月23日(土)圓朝に挑む! 国立演芸場

今回で五回目を迎えるというこの特別企画公演「圓朝に挑む!」。
今回は圓太郎師、龍玉師と興味深い顔ぶれ。家人と連れ立って桜満開の三宅坂へやって参りました。

◆柳亭明楽 『犬の目』

◆柳亭こみち 『にゅう』
全く存じませんでしたが、おめでたとのこと。元気なお子さんが産まれますように。

噺は、下げに道具屋の符帳を掛けた鸚鵡返し物。
こみちさん曰く『圓朝物で埋もれた噺は「噺がついて後がやりにくくなる」か「面白くない」のどちらか』。
聴いてみると、この『にゅう』は『つき易い噺』の様な感じですね。
楽しめました。

◆桂米福 『塩原多助一代記』~戸田の屋敷
お馴染みの出世譚。これも先だっての『名人長二』『お富與三郎』と同じく、江戸から明治、大正の寄席で毎夜連続で口演されたであろう人情噺。
米福師、誠実勤勉な多助同様真面目な高座でした。

~仲 入~

◆蜃気楼龍玉 『やんま久次』
今日、全部持って行っちゃったねぇ~龍玉師。
素晴らしい出来。
またちょうど久次郎の年恰好だしなぁ。遊び人が似合うというか、遊び人の演技が上手ですねぇ、龍玉師は。

最後半は柝が入り芝居掛。
膝立ちの久次郎が袖を捲り上げ『大べらぼうめ』と見得を切る。
いやぁ、好かったぁ。恐れ入りました。

◆橘家圓太郎 『因果塚の由来』
『お若伊之助』をたっぷり演って、後日談を地噺で付けました。

圓太郎師、に組の鳶頭が絶品。長講を熱演。
しかし、やはりこれは『お若伊之助』で終わった方がすっきりしますね。
こみちさんの話で言えば『面白くないから消えた』部類でしょうか。

この噺はこんな具合に一人の師匠に任せるのではなく、四人五人の師匠で語り繋ぐ形で一日の興行にした方が良かったのではないかしらん。
国立だからこそ、そうした思い切った芝居を打って欲しいなぁ~。
『お若伊之助』に後日談を付け足した様な今日のこの噺の扱い方、ちょっと勿体無い気がしました。


劇場方面へ上り坂を歩きながら家人と
『圓太郎師も好かったけれども、今日は龍玉師だなぁ~』

花が満開のお濠端を回って家路へ。





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鈴本3下夜 3/21

 3月21日(木)鈴本演芸場 夜席

昼過ぎに鑑賞歴の長い友人から連絡が入り、最初は「茶話会」のつもりだったのですが
『古今亭だから行きましょう』と急遽上野へ押し出すことに。

古今亭半輔 一目上がり
柳家わさび 狸の鯉
翁家和楽社中 太神楽
橘家圓太郎 強情灸
柳家さん生 出来心
柳家小菊 粋 曲
三遊亭歌武蔵 漫 談
入船亭扇遊 人形買い

~仲 入~

大空遊平・かほり 漫 才
五明楼玉の輔 紙入れ
林家正楽 紙切り
古今亭志ん輔 幾代餅

◆わさび 『狸の鯉』
枕から噺の序盤、客席の反応を探りながら言いよどみつつ進めていましたが、おそらく途中で吹っ切れたのでしょう。客席の受けに捕らわれず、独自の世界へ突入して行きました。
吹っ切れてからが目に見えて好かったですねぇ。面白かった。

◆圓太郎 『強情灸』
湯屋の意地比べから強情灸へ。
『浅間山だぁ』と得意気な表情が火が回って一変。艾をはたき落とすまでの我慢の仕種、表情が絶品でした。
好演。

◆さん生 『出来心』
後半の花色木綿には至らない所謂『間抜け泥』。
独特の口調で愉しい一席。

◆扇遊 『人形買い』
五節句の枕から入り『人形買い』。
いつもの軽妙な口調、愉快な表情で面白可笑しく進めました。
安く買ったと思いきや、小僧さんのお喋りから真相を知った刹那の表情が面白かったですねぇ。
『してやられた』という表情ね。

女房に灸と水で折檻され『熱いよぉ』『冷たいよぉ』『あっ、焼き豆腐・・・』と思い出すまで。
面白かったなぁ~。出来れば下げまで聴きたかった感じです。

◆玉の輔 『紙入れ』
携帯電話の話題から。
かなり長く引っ張りましたので「漫談で下がるのかな?」と思いましたが、携帯電話~浮気と繋げて『紙入れ』。
『旦那が笑いながら包丁研いでいる夢』には大笑い。

◆正楽 紙切り
鋏試し相合い傘、カナリヤ、長屋の花見、娘道成寺、火焔太鼓。
籠の中のカナリヤを見る少女、傑作でした。

◆志ん輔 『幾代餅』
三道楽煩悩から吉原風景へ短く枕を振って『幾代餅』。
志ん輔師の『幾代餅』でいつも感心するのが、清蔵が幾代太夫の錦絵に初めて接する具足屋(絵草紙屋)店頭の場面。
これ清蔵と女将さんの会話中なのですが、清蔵と具足屋店先に一緒に居合わせた見知らぬ誰かとの遣り取りで、つまり直接話法で、幾代太夫の紹介をするんです。
映画なら「回想場面」といったところでしょうか。時間を巻き戻して場面を再現する手法。ここ、好きだなぁ。志ん輔師独特の演出の筈です。

一年で貯めた十三両二分に親方が一両二分足してくれて十五両。それを懐に、借り物の結城紬を着て吉原へと出掛ける清蔵。
この場面も面白かったですねぇ。
親方六右衛門夫婦、そして店の皆に泣きながら挨拶をする清蔵に、親方が『まるで俺が暇を出したみたいだ』。

念願叶った翌朝の清蔵と幾代太夫の会話。圧巻でした。
誠実に『また一年経ったら』と告白し思いを打ち明ける清蔵。
その心根に惚れ『来年の三月、年季が明けたら』と返す幾代。
互いに純粋な気持ちをぶつけ合うその様を、志ん輔師が巧みな描写で客席へ爽やかに届けてくれました。

地噺的表現は努めて避け、会話主体で噺を進める志ん輔師。その為、まるで目の前の出来事を見ている様な感じになるんです。
好かったなぁ~。
素晴らしい一席でした。


跳ねて友人と歩きながら「矢張り志ん輔師『幾代餅』は凄い、十八番だね。流石」「古今亭のお家芸だもの」と意見一致。





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鈴本3中夜 3/20

 3月20日(祝)鈴本演芸場 夜席

鈴本3中夜は『馬石渾身九夜』と題する根多出し興行。隅田川馬石師匠の芸術祭新人賞受賞を祝っての特別企画です。
馬石師、連続口演『名人長二』と重なりながらの芝居で大変だったのではないかしらん。
かく言うこちらも『ようやくのこと只今参上』と言う感じ。
「馬石師苦心の演出『柳田格之進』は是非とも聴かねば」と家人を焚き付け、連れ立って千穐楽にやって参りました。

三遊亭歌りん 子ほめ
柳家喬の字 たらちね
ストレート松浦 ジャグリング
柳家小せん 鷺とり
五明楼玉の輔 宗論
柳家小菊 粋 曲
桃月庵白酒 浮世床
五街道雲助 粗忽の釘

~仲 入~

ホームラン 漫 才
柳家三之助 元帳
アサダ二世 奇 術
隅田川馬石 柳田格之進

◆喬の字 『たらちね』
ところどころに独自のくすぐりを入れた『たらちね』。なかなか面白かったです。

◆小せん 『鷺とり』
不思議だなぁ~。あり得ない話なのに小せん師の話術に引き込まれ、いつの間にか噺の中の野次馬と一緒になって私も五重塔を見上げていました。
雀とり~鷺とり。

◆玉の輔 『宗論』
十八番をさらりと。
玉の輔師はいつでもどこでも質の良い芸で楽しませてくれますね。仕事師って感じです。客席大受けでした。

◆白酒 『浮世床』
玉の輔師とのお喋りが弾んで根多を考える時間が無かったとのこと。
客席の反応を見ながら『浮世床』太閤記。
志ん五師の型。
本当に読めない人が一文字づつなぞっている感じなんですョね。どかんどかん受けてました。
笑い疲れちゃった。
凄いね、恐れ入りました。

◆雲助 『粗忽の釘』
なんとまぁ楽しそうな表情。
『お富與三郎』の雲助師と同じ人なのか?と思うほどです。
客席を爆笑させた総領弟子を上回る大爆笑をもたらしました。流石だなぁ。
お見事。

◆三之助 『元帳』
お馴染みの数え歌から入りました。
聴きながら私、先代の志ん馬師を思い出していました。
古今亭の型を崩さずに。
好演。

◆馬石 『柳田格之進』
出来ました、という感じ。
以前聴いた時(昨年4/24、鈴本)よりも番頭徳兵衛が真っ直ぐな雰囲気になりました。
なんというのかなぁ、柳田宅での難詰め場面も主人思いの余りに、との感じが強調された演出。
この場面、以前は悋気の気味が感じられ、やや下卑た表情、視線で柳田を見る徳兵衛でしたが、それが無くなりすっきりしましたね。好解釈且つ好演出と思いました。

こうなると『出てくる人が皆善人』で噺が平板になり勝ちなのですが、柳田と万屋源兵衛との身分を越えた友情を丹念に描き込み、更にまた父格之進を思う娘お絹の聡明、そして主人一途お店一筋の番頭徳兵衛を絡ませ描くことで、抑揚の効いた物語に仕上げました。

徳兵衛から柳田宅へ行ったと知らされた時の主人源兵衛の無念の表情、そしてその結果を予測して悲嘆にくれる様子。
また、湯島切通で柳田に出会ったことを先に帰った鳶頭から聞き、あとから帰宅の番頭徳兵衛に笑顔で(何事も無かった様に)翌朝早くの品川行きを申し付ける場面。良かったなぁ~。
万屋源兵衛の心情を思い、熱いものが込み上げてきました。

いやぁ、素晴らしかったなぁ~。
実にすがすがしい気分です。


跳ねて外はかなりの水溜まり。
相当降ったんですな。花は大丈夫だったかなぁ?

家人は白酒師『浮世床』、雲助師『粗忽の釘』に笑い、馬石師『柳田格之進』に深い感銘を受けたとのこと。
深く頷く私。
あとね、不思議なことに昨年4月24日にここで馬石師の『柳田』を聴いた時にも、跳ねて外へ出たら雨上がりだったんだよ。など喋りながら家路へ。





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五街道雲助 お富與三郎 島抜け 3/17

 3月17日(日)五街道雲助 『お富與三郎』
連続口演 第六夜『島抜け』 お江戸日本橋亭

連続六回口演大楽。

◆五街道雲助 お富與三郎 島抜け
『初日は確か寒い晩だったと思いますが、今日は桜も開花して・・・』と切り出しました。
そうですョねぇ~、初日(3/4)から二週間足らずなのにこちらの装束もやや軽くなっていますもの。
季節の移り変わりは早いものよ・・・
と感慨にふけっていると、いきなり本編へ。

ねじ込みに行った家主伊之助家内の喧嘩場面から。
これがまた大迫力。
與三郎、伊之助互いに大声を上げ目を剥いての啖呵の応酬。
のんびり時候の話題の直後、これだもの。掴み、巧いなぁ~。

埒明かずと激高した與三郎、お富を伴い松屋店先へ走り、座り込み。
騒いでいるところを市中見回りの役人に見咎められ、引き立てられてしまいます。

殺しの嫌疑は掛けられなかったものの、お富は永牢、與三郎は佐渡へ島送りとのお裁き。

ここで江戸から陸路、新潟までの見事な道中言い立てが入りました。

三年目を迎えられる者は少ないとも言われる佐渡の水替人足。それは大変過酷な労役です。

余談ながら、これは正式には刑罰ではないんですね。お馴染みの鬼平こと長谷川平蔵が献策した人足寄場構想による「寄場送り」と同義の「無宿人の隔離、更正策」で、小遣い銭程度ながら給金もあったとのこと。
この與三郎は「島送り」であって、刑罰の「遠島」とは異なる訳です。
とは言うものの佃の人足寄場なら何か技術が身についたのかも知れませんが、水替など身についたところで外へ出て何の役にも立ちませんから、矢張り懲罰的要素も相当含んでいたのでしょう。

與三郎は一緒に送られた江戸者二人、御家人鉄五郎、坊主松と示し合わせ、一か八かの島抜けを企みます。

企みます、と言ってもこの與三郎、どこまで行っても他人任せ。周囲の言動によって我が身の左右を決める言わば尻腰のない男。
今般も御家人鉄五郎の企みに乗ったに過ぎません。

大体にして非番の日、丘から海原を眺めて『お富はどうしているだろう』
島抜けの際、船着場の警戒厳しく、やむを得ず丸太が流れついている筈の入江へ飛び降りる時も、他の二人は『南無三』かなんかで跳ぶのを『お富ぃ~』
とまるで意気地がない。

がしかし強運の持ち主であることは確か。なんと御家鉄の推量通り入江に丸太は流れついていて、それを筏に組んで三人は荒海へ漕ぎ出していきます。

この島抜けの場面は本当に息を呑む連続。見守る感じでたっぷり堪能しました。
通常人物造形、また感情の描写というのは芝居的要素つまり見せる部分も多分にあると思いますが、自然現象を描写するというのは、これ完全に話芸、語り芸の世界。
ぶつかり合い砕け散る波、強く吹き荒れる風、車軸を流すが如くの雨、それらがない交ぜになって聞こえる「音」。
雲助師は卓抜した描写力で客席の目の前に、その大嵐の様子を切り取ってきて見せてくれました。
凄かった。

まだ続きがあるが如く終わるのが『人情噺』の常なのか、與三郎は江戸へ・・・と含みを持たせた読み終わり。
いやぁ、恐れ入った。
お見事でした。


『島抜け』ならぬ抱え膝の牢内から『解き放ち』の後、家人が『両方ともあっけなく終わった感じ』とやや拍子抜けの体。
馬石師『名人長二』はまた将来、更に練った形で聴く機会もあるだろうし、雲助師『お富與三郎』は今夜は言うなれば『外伝』『後日談』みたいなものだろうから、など言い合いながら家路へ。

あっ、そうそう。
柳亭市助さんのことを少し。
私、原則として前座さんの感想は書かないことにしていますが・・・。
市助さんの五席を聴いて『声は良いし、第一、噺の中の会話が実に活き活きしているなぁ』と感心しました。


全て含め見事な好企画、好演の六夜。

雲助師音頭による三本締の響きが耳に心地良く残っています。





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隅田川馬石 名人長二 お白州・大団円 3/17

 3月17日(日)隅田川馬石 『名人長二』
連続口演 第六夜『お白州・大団円』 お江戸日本橋亭

連続六回口演千穐楽。
大入袋の配られる大盛況。

◆柳亭市助 一目上がり

◆隅田川馬石 名人長二 お白州・大団円
長二の駆け込みを受けての調べの様子と周囲の苦心を描く千穐楽。
南町奉行筒井和泉守は名人長二を助けようと考え、狂人であろうと謎を掛けますが長二はそうではないと湯河原棄児から請地の土手の出来事までを包み隠さず明らかにします。
この申立によって長二は親殺し、死罪を免れなくなります。

調べを進めますと、幸兵衛が亀甲屋に入り婿となる際の後見人として美濃屋文字作夫婦が浮かび、これを聞き取るうちに長二は亀甲屋主人半右衛門の息子と判明します。
従って幸兵衛は長二の実父ではなく、こちらは親殺しにはなりません、しかしお柳は実母なので親殺しは免れないこととなります。

この美濃屋文字作夫婦を訪ねて、旧知の鍼医玄石がやって来ます。
郷里高山から再び江戸へ出てきた玄石は、開業資金として百両を無心しますが、美濃屋夫婦が取り合わないでいると、かつての亀甲屋半右衛門殺しを根多に強請を掛けます。
内偵していた下廻りがこれを聞き咎め、この三人をお縄に。

そして調べの結果、お柳の意を受けた美濃屋が玄石へ半右衛門の毒殺を依頼したことがわかり、またその前々からお柳は美濃屋の手引きで密通していたことも判明します。

奉行筒井和泉守は老中へお伺いを立て、さらに老中らは十一代将軍家斉公へ決裁を持ち越します。
将軍家斉公はこの一件を湯島聖堂の林大学頭に諮問。
林大学頭より、長二は実父半右衛門の仇討ちをしたのであり、またお柳はその不実な行動から既に半右衛門の妻たる資格を失っており、妻でないものは子の親でもないとの講義を受け、これを参考に長二の罪を問わぬ決裁をします。

とまぁ、なんとも複雑な物語であり、また人間関係なのですが、馬石師これを順序よく整理して噺へ入れてきました。お見事。

惜しいなぁ~と思いましたのは筒井和泉守の吟味描写。
吟味に際し奉行は扇子を膝に立て、更に片手は軽く握り膝上とするべきだったのでは?
町人と同じく指を揃えて両の手を膝上では、いくら姿勢や口調で演じ分けをしても武家らしさが薄れ、不自然な感じがします。
ここだけは残念でした。

しかし説明に終始しがちになるところを、美濃屋夫婦の会話や鍼医玄石の絡みなど見応えのある活写は流石。

ほっとした表情で辞儀のあと、陽気にかっぽれを踊って下がりました。





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五街道雲助 お富與三郎 茣蓙松 3/12

 3月12日(火)五街道雲助 『お富與三郎』
連続口演 第五夜『茣蓙松』 お江戸日本橋亭

連続六回口演五日目。『茣蓙松の強請』

◆五街道雲助 お富與三郎 茣蓙松
稲荷堀での目玉の富殺しを根多に、蝙蝠安から度々無心されているお富與三郎。
稼ぎの無い懐から持っていかれるのですから堪らない。ついに玄冶店の家を売り払い、秘かに元柳橋へと住替えます。

柳橋万八楼からの帰り道、夕立に降られ元柳橋のお富の家へ雨宿りをした芝、田町の茣蓙屋隠居松屋芳兵衛は万両分限と噂の大金持ち。その上無類の吝嗇で、また稀代の女好き。

その好色が祟り、まんまとお富の色香に迷って相対間男の餌食となった茣蓙松隠居芳兵衛。
紙入の八両二分をそっくり取られた上に五十両の証文を入れ、這々の体で田町の自宅へ戻ります。

帰宅した芳兵衛は自らの家作を任せている貸本屋上がりの家主伊之助に五十両を渡し、この相対間男の後始末を頼みます。
汚れた着物に着替えドジ拵えの伊之助は、持ち前の口舌と押しの強さで與三郎を丸め込み、五十両の内から二両を與三郎へ渡し示談を纏めて残金四十八両は自らの懐へ入れてしまいます。

伊之助に呑まれて思う程に金にならなかったお富與三郎。しばらく経ってから当の伊之助の甥の背負い小間物屋から裏話を聞いて激怒、伊之助の家へねじ込みに行きます。

悪党としては二枚三枚と役者が上の伊之助は二人を全く相手にせず、窮したお富與三郎は松屋の店先で騒ぎ立てる挙に。

とまぁ、今夜は誠にどうも締まらない一幕。
客席は笑いが起きていましたが、笑うよりもむしろ哀れさが先立ってしまいそうな間抜けさ加減。お富與三郎ご両人の形が好いだけに、滑稽さが余計に浮き彫りとなる感じです。
『髪結新三』にも似た場面がありますが、あちらは半金、こちらは殆ど全部撥ねられるのですからねぇ。
詰めの甘さが何とも歯痒いですなぁ。

雲助師、茣蓙松隠居芳兵衛がちょうど同年輩のせいかその人物造形が誠にお見事。気づくと私もごく自然に芳兵衛に共感しながら観ていました。

あと、示談金の頭を撥ねられたと知る場面、小間物屋との会話で與三郎が鼈甲屋の符帳を使って値切ります。
ここはなかなか見応えある遣り取りでした。
この挿話により、鼈甲問屋の若旦那気分が抜けきれない與三郎をより鮮明に描き込んだとも感じました。
伊之助にはまさにそこを突かれた訳ですが・・・。


楽日は雲助師苦心の演出による『島抜け』。じっくり楽しむことにしましょう。





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隅田川馬石 名人長二 清兵衛縁切り 3/12

 3月12日(火)隅田川馬石 『名人長二』
連続口演 第五夜『清兵衛縁切り』 お江戸日本橋亭

連続六回口演五日目。

◆柳亭市助 狸札

◆隅田川馬石 名人長二 清兵衛縁切り
請地の土手の出来事のあった翌日十一月十日の夕刻、前日から深川六軒堀の伯母の病気見舞いで留守にしていた手伝いの兼松が本所〆切の長二宅へ戻ってみますと、そこは既に空店となっていて長二は行方知れず。

今朝早くに長二が来て、急に旅に出ると言い全てを始末していったと大家から聞いた兼松は、両国大徳院前の親方清兵衛の家へ行き、長二の居所を尋ねます。
親方の清兵衛、一番弟子恒太郎、恒太郎の女房で清兵衛娘お政、そして兼松らが心配をしているところへやって来た長二は深く酒に酔っている様子。

長二は清兵衛が指し明日納めるという書棚に難癖をつけ才槌で壊してしまい、ひと月前の日付の縁切状を書いて親方清兵衛宅を去り、月番の南町奉行所へ駆け込み訴えをします。

前回の『請地の土手』が最高に盛り上がる場面だと手前勝手に思っていましたが、馬石師の演出はむしろ今夜の『清兵衛縁切り』が盛り上がり場。

登場人物も多く、親方清兵衛、恒太郎、お政、兼松そして長二の五人。
難しい場面を馬石師は、恒太郎の怒り、清兵衛の思慮、兼松の慕い、お政の困惑など、登場各人の心情を客席へ示しながら見事に演じきりました。
好かったなぁ。素晴らしい高座でした。

清兵衛親方の『何か子細がある筈だ、書棚を内側から叩いた』との言葉は、『仏壇叩き』で長二が坂倉屋に言った『きちんと出来た指物は外から叩いても壊れぬ、しかし通常有り得ない内側からの力を加えれば好く出来た指物でも壊れる』を思い出させてくれましたね。

難癖を付け行灯の陰で内側から才槌を振るう長二のそのつらい心。
日付を遡った縁切状。
少し潤みました。

さぁ、次回はいよいよ千穐楽『お白州・大団円』。
楽しみです。





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五街道雲助 お富與三郎 稲荷堀 3/10

 3月10日(日)五街道雲助 『お富與三郎』
連続口演 第四夜『稲荷堀』 お江戸日本橋亭

連続六回口演四日目。

◆五街道雲助 お富與三郎 稲荷堀
玄冶店で再会したお富與三郎。
お富を囲っていた多左衛門は二人の因縁を知り、妙な関わりは面倒とばかり家屋敷もろとも二人に与え身を引きます。

この『お富譲り』も速記では一幕あるそうですが、雲助師は地噺で。

これと言った稼ぎもなく、着物や櫛笄など売り食いしていたお富と與三郎でしたが、いよいよ窮して来たところへ蝙蝠安が家を賭場に場所貸しする話を持ち掛けて来ます。
一時は賭場のかすりで潤うものの、お上の目が届き始めて客足が遠のくことに。
お富は賭場の客で羽振りの良い鉄物商奥州屋藤八を丸め込み、與三郎を従兄弟と偽って妾に収まります。

藤八の手前情夫面も出来ぬ與三郎、藤八が家に来ると遊びに出たり隠れたり。

或る日與三郎を留守番にしてお富が湯へ行きますが、そこへ藤八がお富に逢いに来ます。
いつもの様に煙草盆を手に戸棚へ隠れる與三郎。

留守を訝りながら藤八がお富の帰りを待っていると、そこへ目玉の富八がやってきます。

富八は新規開帳の賭場で遊ぶ金をせびろうとお富を訪ねてきたのですが、留守と知ると藤八に思わせぶりにお富の素性を語り、お富與三郎の因縁話を三両で藤八に売ります。

目玉の富の下卑た小悪っぷりがまた巧かったなぁ、雲助師。

富八の話しを戸棚の中に隠れ聴く與三郎。
一方藤八はお富を本妻に直そうとも思う程に惚れていたところへ、目玉の富からの思わぬ因縁話。
従兄弟と聞いていた與三郎が実は情夫と知り、自らの浅慮を悟ってお富と切れる決心を付けます。

帰宅したお富は、藤八の態度の急変に驚き困惑します。戸棚から出て来た與三郎が出刃を手に外へ飛び出して目玉の富を追います。

ここは『勢い』とでも言うのでしょうか、ただただ『ぺらぺら喋られては今後に差し支える』との與三郎の一心が好く表現されていました。
それと『実が三分嘘が七分』と雲助師は言ったかな?言い回しはうろ覚えですが、目玉の富が面白おかしく尾ひれを付けて「嘘を喋った事」に與三郎は我慢ならなかったのではないか。
また雲助師はそうした演出によって與三郎の育ちの良さ、うぶな様子を表現しようとしたのでは、とも感じました。

雨降る中、稲荷堀で目玉の富に追いついた與三郎は、腕力に勝る富八に組み伏せられてしまいますが、上になった富八の腹へ出刃包丁を突き上げ致命傷を負わせます。

泥だらけで帰宅した與三郎に一部始終を聞いたお富は『ところで、とどめは差したのか?』と與三郎に問いますが・・・。

相合い傘で稲荷堀へ急ぐお富與三郎。
虫の息の目玉の富へとどめを差すお富。

屍と化した富八の懐から奥州屋の与えた三両を抜き出し、歩き出す二人の前に立ちはだかる者が・・・。

と、今夜はここが切れ場。
見事な盛り上げ、そして突然の切れに私、思わず知らず『ほぅ~!』と声が出ました。


とどめを差すのに尻込みをしていた與三郎ですが、相手が死んだとなると懐を探る様な一端の「悪」になって行きます。
素人から玄人へと言ったところ。
この與三郎の変わり様を雲助師は巧みに描写してくれました。


また今夜は目玉の富八の浅はかな小悪っぷりが印象的。
跳ねて歩きながら家人曰わく『ぺらぺら喋らないで、適当に取り巻いていれば良かったのに』
まぁ、そうした知恵が働かず目先の小金にしか考えが及ばないから「小悪」なんですョ。

あと一つ、馬石師『名人長二』でも触れましたが、こちらでも金の事。
奥州屋藤八が目玉の富に与えた三両は『小粒十二』と表現されました。
一分の「小粒」を十二粒。う~ん、ここも感心しちゃったなぁ。





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隅田川馬石 名人長二 請地親殺し 3/10

 3月10日(日)隅田川馬石 『名人長二』
連続口演 第四夜『請地の土手』 お江戸日本橋亭

連続六回口演四日目。

◆柳亭市助 手紙無筆

◆隅田川馬石 名人長二 請地の土手
亀甲屋夫婦が長二の家を訪ねて来た折、長二は自らの疑念をぶつけ親子の名乗りをしてくれるように話しをします。
幸兵衛は邪険な言い回しで長二をなじり、お柳は狼狽えながら長二の疑念を否定します。
早々に長二宅を辞し柳島の別宅へ急ぎ帰る亀甲屋夫婦。
先程、暮らし向きの足しにとお柳が差し出した五十両の金を置きっぱなしにして夫婦が帰ったのに気づいた長二は、金を懐に近道を走り二人を追い掛けます。

見応えのある場面でした。
詰問する長二、怒りながらなじる幸兵衛、言葉では打ち消しながら表情では肯定してしまっているようなお柳。
座敷内の緊迫感溢れる三人の遣り取りを、それぞれの表情、声音は勿論、姿勢も瞬時に切り替えて演じ分け、客席を引き込んでくれました。
また『新吹の二分金で二十五両の包みを二つ』と、池波正太郎先生ならば『そうそう、切り餅と言うぐらいで四角で無ければおかしいんです』と喜びそうなこだわりを見せたのには感心しました。

先回りをして請地の土手で夫婦を待つ長二。
幸兵衛とお柳はいましがたの長二宅での遣り取りについて互いに喋りながら歩いて来ますが、その会話から幸兵衛夫婦は矢張り実の親なのだと長二は知ります。

道を塞ぎ親子の名乗りをするように頼む長二でしたが、再び幸兵衛になじられ力づくの喧嘩へ発展。
揉み合ううちに自らの匕首で胸を刺してしまう幸兵衛。
お柳も転んだはずみで長二の持つ匕首が背中へ通り、夫婦はその場に果ててしまいます。

帰宅しない長二を心配した兼松は、翌朝親方箱清の家へ消息を尋ねに行き、そこへ酒に酔った長二が現れます。
ここで『この続きは明後日』と切りました。

馬石師、一本気で裏の無い長二の気質を『感情を抑えた口調そして表情』『背筋を伸ばした姿勢』などの工夫で表してくれました。
素晴らしい高座、お見事。





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らくご・古金亭 3/9

 3月 9日(土)第九回らくご・古金亭 湯島天神参集殿

『お富與三郎』『名人長二』連続口演に挟まって軽い噺も、と言ったところ。

客演の小里ん師『首ったけ』、同じく客演、お久しぶり遊雀師『船徳』。
雲助師『ずっこけ』、馬生師『今戸の狐』、馬石師『崇徳院』と根多出しされています。

◆金原亭駒松 『穴子でからぬけ』

◆金原亭馬治 『転宅』
気合いの入った高座。
最後兵衛がお菊の色香にとろとろになる様子が愉快。この場面、もっと時間を使って強調したらどうかしらん。
馬治さんは女性も上手ですし、より面白おかしくなるのでは?
好演。

◆柳家小里ん 『首ったけ』
小里ん師と一朝師が「江戸弁の双璧」でしょうかね。
職人の勝つぁんを見事に活写し、色街風景を描きだしてくれました。
吉原とくれば小里ん師の右に出る者は居ないですしねぇ、昔も今も。
いやぁ、素晴らしい高座でした。

◆隅田川馬石 『崇徳院』
恋患いの若旦那の描写は略筆。「想い人探し」に重点を置く演出。
愉しい一席となりました。

◆五街道雲助 『ずっこけ』
何度聴いても面白い、まさに十八番。
居酒屋の小僧さんが可愛くて好きですね、私。
今夜も『草津の湯』で切らないで最後まで演りました。
流石の出来。

~仲 入~

◆三遊亭遊雀 『船徳』
“泣きの遊雀”が弾けました。
船頭に“でも”なろうと言う若旦那、親方に止められると『じゃ隣の船宿の船頭になる』と拗ねてみせるも、知らんぷりの親方。
若旦那ここで“大泣き”。
あと船上で今一度若旦那の泣きが入ります。

ここの高座は演者が動く度に「みしみし」音が鳴りますが、それが船を漕ぐ場面で『思わぬ効果音』となったのは面白かったですね。
遊雀師、存分に泣いて下げ。

◆金原亭馬生 『今戸の狐』
根多を見た時に『難しい噺を掛けるんだなぁ』と感じましたが、馬生師は丁寧に仕込んで下げへつなげました。

馴染みのない背景ですし、今や使われなくなった言い回しを巡る噺ですので、説明的になってしまうのは仕方ないでしょうね。
しかも噺の大半が仕込みですからねぇ。演ずるのも苦労でしょう。
カルピス、スジャータ、本当なのかなぁ?調べてみようっと。


跳ねたのは九時を回っていましたか。
五時二十分ごろ駒松さんが上がった筈ですから、今夜の古金亭は寄席に伍するたっぷりな会となりました。

やや疲労感を覚えながらも、咲き誇る梅がライトアップされた庭園を愛でつつ次回、次々回予定を見て家人と『また来ようかね?』




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五街道雲助 お富與三郎 玄冶店 3/7

 3月 7日(木)五街道雲助 『お富與三郎』
連続口演 第三夜『玄冶店』 お江戸日本橋亭

連続六回口演三日目。
今夜はお馴染み、玄冶店。

◆五街道雲助 お富與三郎 玄冶店
赤間源三右衛門が與三郎にとどめを差そうとする刹那、ばたばたばたと駆けつけ飛び込んで来たのは髪結の江戸金。
與三郎の命を何とか救いたい思いから、與三郎を叔父藍屋吉右衛門に返せば金になることを示唆し、源三右衛門と松蔵はこれに従い與三郎を俵詰めにして藍屋へ百両で売り、その金を懐に木更津を出ていきます。

一方、蘭学の心得のある大名医者箭内寛斎の懸命の治療によりなんとか命をとりとめた與三郎。
しかし顔、身体に負った三十四ヶ所の切創は蝋燭の火で灼かれた為もあり深く痕を残して消えることはありません。

文字通り傷だらけで江戸両国横山町三丁目伊豆屋へ戻った與三郎。
気散じに外へ出れば聞こえよがしに傷の噂をされる為、塞ぎ込み外出もしない毎日。

そして三年が過ぎた六月十日。
この日は薬研堀の縁日で両国の花火が上がります。

逼塞ばかりで病にでも罹ってはとの両親の言葉を受け、與三郎は久し振りに外出しその帰り道にお富らしき姿を見かけ気になって玄冶店の家まで後をつけていきます。

通りからお富らしき女の家を伺っていると、この家へ強請に来た蝙蝠の安五郎と目玉の富八というごろつきに声を掛けられ、三人でこの家に。

蝙蝠安の脅したり宥めたりが面白おかしく、先程の馬石師『名人長二 谷中天龍院』での兼松の茶利と同じ効果を上げました。
最高に盛り上げる直前の抜き場。

この直後から糸が入り芝居掛となります。
有名な『しがねぇ恋の情けが仇・・・』からの長科白を淀みなくまた格好良く喋り終え『続きは次回』と切りました。

ふむ~、好かったなぁ。

今晩は有名な『玄冶店』だったからか、満員だった前二回を超える混雑でまさにすし詰め。
雲助師、馬石師、その超満員の客席に充分応えてくれました。

いやぁ面白かったぁ~。





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隅田川馬石 名人長二 谷中天龍院 3/7

 3月 7日(木)隅田川馬石 『名人長二』
連続口演 第三夜『谷中天龍院』 お江戸日本橋亭

連続六回口演三日目。

◆柳亭市助 たらちね

◆隅田川馬石 名人長二 谷中天龍院
江戸へ戻った長二、両親の墓所である谷中天龍院に足繁く詣り、寄進などもして今までに増して供養をしていました。

母おさなの十三回忌を命日の三月十七日に執り行った長二は、和尚に引き止められるまま様々話しをしていましが、そこで和尚に紹介され亀甲屋幸兵衛という羽振りの良い商家の主人と知り合います。

何事にも横柄な態度の幸兵衛を避けるように言葉少なに接する長二。
幸兵衛は長二の過去を聞き大いに驚きます。

ここでの長二の態度、表情は見事でしたねぇ。一本気な職人らしさが好く表現されていた様に思います。

折りに触れ長二に仕事依頼をする幸兵衛でしたが、深川成田山の御開帳の帰り道に女房のお柳を伴って長二の家を訪ねます。
長二の顔を見たお柳はにわかに体調を崩し、早々に長二宅から帰ります。

置いていった折詰を巡る茶利が入りますが、なかなか愉しい場面でした。
剽軽な兼松を軸に翌日の亀甲屋からの使いとの遣り取りまで抜き場となりますが、馬石師は剽軽兼松を面白おかしく演じました。

幸兵衛からの仕事の依頼で柳島の亀甲屋別宅を訪ねた長二は、薄々この夫婦が実の親ではないかと感じている様子。
幸兵衛夫婦に過去をあれこれ問われ、捨て子であったことを夫婦に伝え、肌を脱ぎ背中の傷を見せます。

卒倒するお柳の様子から、長二はこの夫婦が実の親だとの思いを強くしていきます。

今夜はここまで。
馬石師、緩急をつけた演出で出色の高座。お見事でした。




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五街道雲助 お富與三郎 木更津 3/5

 3月 5日(火)五街道雲助 『お富與三郎』
連続口演 第二夜『木更津』 お江戸日本橋亭

連続六回口演二日目。

◆五街道雲助 お富與三郎 木更津
関良介の進めもあり江戸を離れ、木更津の叔父藍屋吉右衛門の元へ身を寄せた與三郎。
江戸とは違い寂しい漁師町で毎日を過ごしています。

夏も過ぎた九月十五日、東大権現の祭礼見物へふらり出掛けた與三郎は、地元の博打打ち赤間源三右衛門の女で深川芸者上がりの横櫛のお富と出会います。

この最初の出会い場面、その後の料理屋鶴屋二階座敷内の描写、好かったなぁ。
また「子分」とは言いながらみるくいノ松蔵のその迫力ったらないんだ、これが。
悪い奴だなぁ~、と見せる雲助師の巧みさに感心しました。

美男美女のお富與三郎は程なく理無い仲となり、源三右衛門の留守をいいことに貪り合う様に逢瀬を重ねます。

北関東から水戸まで足を伸ばして花会三昧の源三右衛門は、十一月初めに木更津へ戻って来ますが、子分みるくいノ松蔵の告げ口からお富の裏切りを知り、一計を以てお富與三郎の密会に踏み込みます。

さぁ~、ここから凄かったですよ~。
子分の松蔵で前述の迫力ですからねぇ、親分の源三右衛門の憤怒の表情たるや、まるで鬼。

言葉飽くまで荒々しく、残忍な響きを帯びた怒鳴り声は客席を静まり返らせました。
とにかく物凄い形相。そして聴く者を震え上がらせる声。

與三郎はお富の見ている前でなます切り。
『朱で描いた達磨さんだぁ』とは長脇差で與三郎を一寸刻み、五寸刻みにしている源三右衛門の言葉。

見るのも辛いとお富はその場を逃げ出し、追ってくる松蔵を振り切って海へと身を投げ、行方知れずに。

最後半は芝居掛。
糸が鳴り雲助師十八番の七五調の科白で源三右衛門が啖呵を切ります。

さぁ與三郎にとどめを差そうと源三右衛門が長脇差を構えたその時、
誰かが『待ってくれ』と走り込んできたところで『この続きは次回』と切れました。

うわぁ~、これどうなるのぉ?って感じ。
昔の寄席興行はまさにこの調子で翌晩の集客をしていたんだろうなぁ~、とつくづく思い知りましたねぇ。

それにしても赤間源三右衛門の怒りは大迫力、物凄かったぁ。
ただ怒っているのではなく強い嫉妬が絡んでいる、その心情を雲助師が巧みに描写。
非常な説得力を持って源三右衛門の怒りが客席へ迫って来ました。

しかし「なます切り」怖いよ~。
切るだけでなく、その切創に酒を吹き付けるやら、傷口を蝋燭の火で灼くやら、絵を想像すると気持ち悪くなる所業。
凄かったなぁ。


跳ねて歩きながら家人が『怖い怖い』と怯えるのを宥めつつ家路へ。





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隅田川馬石 名人長二 湯河原宿 3/5

 3月 5日(火)隅田川馬石 『名人長二』
連続口演 第二夜『湯河原宿』 お江戸日本橋亭

連続六回口演二日目。
初日は前座抜きでいきなり馬石師が上がりましたが、今夜から前座が前方を務めるとのことです。

◆柳亭市助 道灌

◆隅田川馬石 名人長二 湯河原宿
坂倉屋助七から依頼された仏壇の一件で名人指物師としての名声が更に高まった長二郎、依頼される仕事も大変多くなり、弟弟子の兼松と二人忙しく働く毎日。

兼松が仕事中に鑿で足を怪我を負い、その傷が破傷風にでもなりそうでもあり、また長二自身も仕事の疲れからか、子供の頃からの背中の古傷が痛みを発して参りましたので、ここはいい潮とばかりに文政三年の十一月初旬、兼松と二人、相州湯河原へと湯治に出掛けます。

湯河原の藤屋に投宿しゆったり湯治の長二と兼松。

馬石師、この湯河原湯治を地元の料理などを二人の会話で紹介しながら、ゆるりとした風情で演じました。
また湯治の「ひと回り」が一週間であり、「ふた回り」乃至「み回り」で湯治の効果が出てくると蘊蓄を授けてくれました。

長二の湯治の目的は背中の傷の快癒という話題から、宿の婆さんに昔の『棄児騒ぎ』を聞かされ、自分がこの湯河原藤屋の泊まり客の良い身なりをした若夫婦の子であり、その若夫婦に湯河原はずれの竹や茅の生える藪に捨てられたのだと知る長二。

この場面の婆さん、兼松、長二のそれぞれの描写は流石馬石師といった見事なものでしたねぇ。
特に長二の深刻な表情、巧かったなぁ~。

婆さんから、実の親と思っていた長左衛門とおさなは育ての親であり、自分はこの二人に助けられたが為、二助と名付けられたと聞かされる長二。

背中の傷は放り棄てられた際に竹の切り株が突き刺さった為に出来たのだと判り、長二は実の親の無慈悲と育ての親の恩を同時に知ることとなります。

育ての親の先祖代々菩提寺である曹洞宗清谷山福泉寺に詣り、懇ろに先祖と育ての親の供養をした後、長二と兼松は本復した身体を江戸へと運びます。

年改まり翌文政四年。その三月半ば。
江戸、谷中天龍院で母おさなの十三回忌法要を行ったところで『この先は明後日』となりました。

馬石師、表情豊かな高座。堪能しました。
三十分強の高座でしたか?。それがあっという間に過ぎた印象。お見事。
昨夜同様『続きは明後日』と嬉しそうに切りました。

矢張りこの台詞、演者へ何か非常な魔力を与える感じですねぇ。
また客席側へは、なんとも不思議な期待感を植え付けてくれます。

また明後日が楽しみだなぁ~。





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五街道雲助 お富與三郎  発端 3/4

 3月 4日(月)五街道雲助『お富與三郎』
連続口演 第一夜『発端』 お江戸日本橋亭

連続六回口演初日。
馬石師の『名人長二』に続き、雲助師『お富與三郎』。
『名人長二』より聴く機会の多い『お富與三郎』ですが「通し口演」に接するのは初めてです。
楽しみだなぁ~。

◆五街道雲助 お富與三郎 発端
まず最初に『人情噺』の蘊蓄を雲助師が授けてくれました。
昔、寄席興行が半月或いはひと月だった頃、集客の為に『続き物』を掛けることがよくあった、とのこと。
この続き物を『人情噺』と称し、『人情噺が出来なければ一人前ではない』と言うのはつまり『続き物が出来なければ主任は取れない』という意味なんだそうです。

「一夜で終わる泣かせどころのある噺」を『人情噺』と称する用法は間違いなのですね。

そうした『かつての寄席興行』の形(毎晩ではなく、飛び飛びではありますが、十日間余りで六回口演)で『人情噺』を演じよう、との企画が今回だということです。

な~るほど。
それで『お江戸日本橋亭』なのかぁ~、と謎が解けた感じ。
往時を彷彿とさせる畳の席は、こことあと浅草見番ぐらいしか思いあたりませんものねぇ。

さて噺の方は・・・
横山町、鼈甲問屋伊豆屋の独り息子與三郎は大変な美男。
三月の陽気に誘われて散歩の道すがら、友人である宿屋の若旦那と出くわし、連れ立って上野で花見をしてから吉原へ夜桜見物と洒落込みます。

與三郎は絶世の美男子の上に控え目な人柄、敵娼にも気に入られますが、連れの友人は赤っ面で酒癖が悪いので振られてしまいます。

翌朝早く、振られた友人に急かされて二人で吉原を後にしますが、その帰り途中、まだ酔いの残る友人が船頭に絡み、弾みで川へ落ちて行方知れずとなってしまいます。

ここの吉原から大川の場面、つまり三月四日~五日早朝の出来事の描写が素晴らしかったですねぇ。
宿屋の若旦那の悪態、それを受けて敵娼の『野暮な男だねぇ』っていう表情、そして船上の三人の男の遣り取り。
まるでその場にいて、一部始終を目撃した感じでした。

船頭の知恵でその場しのぎの黙りを決め込むものの、当の船頭が大変なごろつき。
万両分限の伊豆屋の若旦那與三郎ならば、幾らでも引き出せるとばかりに強請りを掛けてきます。

この船頭、人足寄場と娑婆を行ったり来たりしていて、言わば失う物が何も無いという雰囲気。
その表情がまた悪いんだ。
雲助師上手いなぁ~悪党が。

三両、五両と半年ばかりの間に二三十両強請られていましたが、それがふと途切れた十一月の或る日、引き込んだ風邪を治そうと與三郎が薬湯へ出掛けた帰り道、待ち伏せていた船頭は新たに百両の大金を與三郎から強請り取ろうとします。

この待ち伏せ場面、船頭が頬被りを取り顔を見せるのが、玄冶店での與三郎の仕種の前奏の様でしたね。

往来で強請られている與三郎を、通り掛かった手習いの師匠関良介が見つけ、両人を自宅に連れ帰り金は立て替えるからと與三郎を家に返します。

この関良介、元々川越藩の侍でしたが十年以前に喧嘩相手を斬り殺して出奔し浪人となったという御仁。
船頭の欲深さを手玉に取り、仲裁話を進めます。

そして、他所へ預けてある千両の内から百両を払うからと船頭を誘い出し、日暮れて雪も降り出す中、飯田町へと向かいます。

飯田町近辺で良介は船頭を袈裟斬りにし、死骸はお堀へ放り込み何事も無かったが如く帰宅。
翌日伊豆屋の主人に話をし『與三郎は暫く江戸を離れた方が良かろう』と、木更津の叔父のところへ預けられることになります。

『そしてその木更津で更に與三郎の身に大きな変化が起きますが、それは明晩』
正確ではありませんが、そんな言い回しを雲助師か気持ち良さそうに口にしながら今晩は幕。

どうもこの『また明晩』という台詞は大きな魔力が潜んでいる様で、馬石師も雲助師も大変嬉しそうにこの台詞を口にしていました。

客席のこちらもなんですか、町内の寄席へ通っている感覚になりましたね。

実際にはそれなりの時間を掛けて日本橋亭まで来ているのにも係わらず、『明晩のお楽しみ』の一言に釣り込まれて『町内気分』のまま下足を取りました。

『いやぁ、早く明日にならないかねぇ』と家人と言い合いながら家路へ。





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隅田川馬石 名人長二 仏壇叩き 3/4

 3月 4日(月)隅田川馬石『名人長二』
連続口演 第一夜『仏壇叩き』 お江戸日本橋亭

連続六回口演初日。
この『名人長二』を生で聴くのは私初めて。
大昔、志ん生師のカセットテープ(ニッポン放送音源)をなけなしの小遣いで月に一本づつ買い続けていた頃、どうしても手が出なかったのがこの『名人長二』の続き物。
その後CDで断片を聴いた覚えはありますが、通しは一度も聴いたことがありません。

師弟揃い踏みの『連続口演』も興味津々。
家人と連れ立って六夜を通すこととなりました。

◆隅田川馬石 名人長二 仏壇叩き
九歳で親方清兵衛の弟子に入り、指物修行を積んできた長二。今や油の乗り切った二十八歳。指物師として名声を得ると同時に変わり者、捻り者でもあり不器用長二の異名を持っています。

ここの、長二の所謂職人気質を馬石師は上手に表しましたねぇ~。
十百年、つまり千年使える道具を作るのだという長二の職人気質を存分に描き込みました。

その長二の元に、蔵前の札差坂倉屋助七から仏壇の注文が入ります。
長二が腕を振るって作った仏壇の見事な出来に坂倉屋助七は大喜び。
しかし『手間は百両。一切負からぬ』との長二の言葉が発端となり、仏壇に難癖をつけます。

才槌で仏壇を打って釘一本でも緩んだら金は要らないとの長二の言葉に対し、助七はもし壊れなかったら千両出そうと言いながら、才槌で力一杯何度も打ち叩くものの緩みは全くありません。

感服した助七は約束通り千両を払うと言いますが、長二は手間の百両だけを取り、帰っていきます。

坂倉屋助七の心情は『職人風情が何を言いやがる』と言う感じ。
対する長二は泰然としています。
馬石師、ここの対比も巧みに描きました。

その後、手伝いの兼松が仕事中に鑿で足に怪我を負い、また長二自身も背中の古傷の具合が思わしくないので、湯河原へ湯治に旅立ちます。

今夜はこれまで。
馬石師、頗る気分良さそうに演じていました。
明日も楽しみです。




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プロフィール

喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)

Author:喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)
喜洛庵寄席桟敷へお越しいただきまして、ありがとう存じます。
寄席、落語会、舞台などの鑑賞記を綴って参ります。

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