2013年10月 鑑賞記録

10月
○ 2日(水)人形町らくだ亭  日本橋劇場
○ 3日(木)白酒ばなし 桃月庵白酒独演会  にぎわい座
○ 5日(土)国立 昼席  主任 茶楽  国立演芸場
○ 6日(日)志ん輔三夜 古今亭志ん輔独演会 初日  国立演芸場
○ 7日(月)志ん輔三夜 古今亭志ん輔独演会 仲日  国立演芸場
○ 8日(火)志ん輔三夜 古今亭志ん輔独演会 千穐楽 国立演芸場
○14日(月)第二回 NBS殺人研究会  お江戸日本橋亭
○16日(水)らくご街道 雲助五拾三次 第七宿 -江戸前-  日本橋劇場
○19日(土)花形演芸会  国立演芸場
○24日(木)鈴本 夜席  主任 三三  鈴本演芸場
○26日(土)国立名人会 芸術祭寄席  国立演芸場
○30日(水)雲助の弟子でござる  深川江戸資料館

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雲助の弟子でござる 其の三 10/30

10月30日(水)雲助の弟子でござる 其の三 深川江戸資料館

DOURAKUTEI出張寄席『我ら雲助の弟子でござる』の第三回。
第一回は牛込箪笥区民ホール、第二回は日本橋社会教育会館で行われましたこの『雲助の弟子でござる』、第三回の今夜は会場を深川江戸資料館へ移し『白酒・馬石・龍玉三人会』。
道楽亭さんのチラシの文言がまた傑作で、『今回は口上も鼎談もありません。落語をたっぷりと一席づつ』とのことです。

開場前、一階ロビーで展示資料など見ながらお茶を飲んでおりましたら、馬石師匠、ややして龍玉師が到着するのを確認しました。
暫く経って龍玉師が係の方に伴われ再び降りて来て、外へ出て一服。ガラス越しに見ますと、ロビーの我々に背を向けて座り、深く煙を吸い込んで沈思黙考の体。
ここは楽屋も禁煙なのかな?
長い一服の後、気合いを入れる感じでまた楽屋へ戻りました。

さぁ、そろそろ我々も二階へ上がりましょうかね。


◆三遊亭わん丈 『無精床』

◆桃月庵白酒 『犬の災難』
出演順を巡って会場に着いてから三人で相談し、白酒~馬石~龍玉と決定したとの『報告』。『“譲り合い”は雲助一門、もっと言いますと十代目馬生一門の伝統です』。
そして一門の忘年会の話題、それぞれの酒の呑み方などを枕に、古今亭のお家芸『犬の災難』へ。志ん生師匠が“猫”から“犬”へ直して演っていた根多ですね。
これは珍しいなぁ。

主人公が次第に酔っていく様子を実に巧みに描写。
『これは旨い酒だ、これさえあればあとは何も要らない』と言う舌の根も乾かぬ内に『綺麗なお姉ちゃんがいると・・・』と妄想へ入って独りごちる、そのまた愉快な様に大笑い。
お見事でした。

◆隅田川馬石 『甲府い』
『龍玉さん、いま一生懸命浚っています』、『どうも一眼国を演ろうと考えていたらしいのですが、主任となるとそれなりの根多でないといけませんから・・・』と、涼しい顔。
先代金馬師でお馴染み、大根、牛蒡、薩摩芋(生、蒸かし芋、揚げ芋)などの売り声を枕に、雪花菜を盗み食いする場面へさっと入りました。

善吉やお花、そして町内の女将さん連中はやや略筆にして、主人夫婦の会話描写に力点を置いた演出。
人情噺に寄らず、滑稽味の勝ったあっさりした味わいに仕立てました。好演。

~仲 入~

◆蜃気楼龍玉 『鼠穴』
元気なく出て来て『もう兄弟子達は帰るそうです』と恨めしそう。予期せぬ主任に、何を喋っても愚痴っぽくなってしまう様子です。
どこかで吹っ切らないと、という感じで『一門を応援して下さるお客様を信じて、思いきって演ります!』
これに大きな拍手が沸きました。
雲助師匠の自伝本の話題などを振りましたけれども、どうも入り辛い様で『ここはお堅い場所で、終演時間も決まっていますのでねぇ』と言いながら『演りましょう』と気を取り直す感じで本編へ。珍しい入り方をしました。

弟の『朝から晩まで働きづめ』描写で、豆腐屋の売り声がつきました。ここで客席に笑いが。
あと、『掏摸に懐中を・・・』もついちゃったなぁ。
これはまぁ、寄席ではなく一門会ですし仕方ないと致しましょう。
そんな故障を吹き飛ばす素晴らしい出来でしたもの。

兄弟の会話で、とくに兄の方の描写が秀逸でした。こう何て言いますか表情や声、喋り方で鮮やかにその因業な性格を伝えてくれましたねぇ。
対して、蔵に火が回り焼け落ちる場面での弟の造形は少し物足りなく思いました。
ここは、さっきの出の時の様な情けない雰囲気だと良かったのですが・・・、本当にがっくり力の抜けた感じまでには見えませんでした。

しかし弟が娘の手を引いて兄の元を訪れるまでの(妻が患いつく長屋内場面を含めた)描写、そして直後の兄弟の会話などは真に迫った生々しさ。充分に堪能しました。好高座。


跳ねて家人と『三席とも好かったねぇ』。
そして開演前に目撃した龍玉師の『一服』について、二人してあれこれ想像を膨らませながらの帰り道となりました。

『龍玉師、弟の方の心持ちだったんだよ、多分』
『一眼国を知っていたぐらいだから、鼠穴も聞き出したに相違ないね』
『で、わざと甲府いを?』
『そうさぁ~、違いないよ』
『へぇ~っ!そうなの?』
『鼠穴って根多だって意味があるんだよ』
『深川蛤町という土地繋がりの根多選びではなく、因業な兄ならぬ兄弟子ってところからの選択?』
『まさに弟の気分だったのさ、間違いない』

いやはや、その妄想の広がること広がること。あっという間に帰宅しました。
大満足のDOURAKUTEI出張寄席『雲助の弟子でござる』。いやぁ~、愉しかったなぁ。




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国立名人会 10/26

10月26日(土)第368回 国立名人会 芸術祭寄席 国立演芸場

白酒師目当てで予約。
はっきりしない天候の中、三宅坂へ。入場時には、普段の名人会とは違う『芸術祭寄席』ということで、特別の冊子が配られました。


◆昔昔亭喜太郎 『平林』

◆桃月庵白酒 『転宅』
ホテルのメニュー誤表示の話題から本編へ。
朝になって時間潰しに町内を歩きながら『夫婦になったらあんなこと、こんなこと』と妄想する男の様子が面白かったですねぇ。
『たらちね』で八五郎が七輪の火を起こしながら、独りごちる場面を思い出しました。

◆ナポレオンズ 奇 術
お馴染みの『回る首』も見せてくれました。最後は『人体浮遊』。
寄席の芸として完成していますね。流石です。

◆柳亭市馬 『三十石』
江戸者二人が狂言回しで登場するものの、噺の舞台が京大阪ですので上方言葉が主体。聴いていて若干の違和感あり。
もっとも市馬師にしてみれば最後半の舟歌が主眼の筈。見事な喉を存分に披露してくれました。

途中、宿帳と言いますか、この場合乗船名簿なのでしょうが、並河益義、美濃部孝蔵、山崎松尾、岡本義、などと演ってくれたのですけれども今夜のお客様はまるで反応がありませんでした。

~仲 入~

◆三遊亭好楽 『一眼国』
枕で見せ物小屋の口上、そして様子をたっぷりと。
本編に入って、香具師と六十六部の遣り取りが略筆でしたので『あれ?』と思いましたけれども、お白州場面を詳細に描いて盛り上げました。

◆やなぎ南玉 曲独楽
扇子、刀、長煙管(風車)、糸渡り。
曲芸に入る時、終わった後、おそらく昔ながらの仕種なのでしょう、それぞれ独特の「型」を見せながら演るのが愉しいですね。
歌舞伎の見得にも似た様式美とともに堪能しました。お見事。

◆桂歌丸 『ねずみ』
市馬師、好楽師も言っていましたけれども、好楽歌丸両師、今日は山形での収録を終えての出演とのことです。 
本編で合間々々にお仲間の小根多を挟むのは、いつもの事。今夜のお客様もそうした演出を喜んでいらっしゃる様子でした。

ねずみが動かなくなって呼ばれた甚五郎と政五郎の二人が、虎の彫り物を仰ぎ見ながら交わす会話、またその際の目の演技、お見事でした。


跳ねてふと時計を見ると9時半近く。
『結構押していたんだなぁ』と独りごちながら家路へ。




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鈴本10下夜 10/24

10月24日(木)鈴本演芸場 夜席

先週(10/16)の“らくご街道 雲助五拾三次 -江戸前-”へ、長い鑑賞歴を持つ友人を『ご一緒に如何?』と誘いましたところが、時間の遣り繰り不調で沙汰止みに。
『それでは定席を』と香盤を眺めましたら、上野は三三師匠の芝居。
『まるで誂えた様だね』など喋りながら鈴本へ二人旅。


柳亭市助 道灌
林家扇 悋気の独楽
鏡味仙三郎社中 太神楽
柳亭燕路 間抜け泥
林家しん平 漫 談
ダーク広和 奇 術
橘家圓太郎 浮世床
柳家小里ん 天災

~仲 入~

大空遊平・かほり 漫 才
春風亭正朝 紙入れ
林家正楽 紙切り
柳家三三 粗忽の釘


◆市助 『道灌』
着実に前進している感じ。
御隠居の佇まいが秀逸。前座さん離れした高座でした。

◆扇 『悋気の独楽』
二つ目になってからお初かしら?
『雰囲気が違うな』と感じましたがお化粧が出来るようになったのね。髪も赤く染めていました。お似合いです。

妾宅の下女を含め女性の描写、好かったなぁ。定吉の人物造形も見事でした。
しかし前半で言葉の繰り返し、言い換え(トートロジー)が何ヶ所かありまして、そのせいか後半が若干急ぎ加減になってしまったように思います。
くすぐりの二度押し、説明っぽい言い換え、しなくてもいいのではないかしらん。

◆鏡味仙三郎社中 太神楽
今夜は仙三郎師匠単独出演。
師匠の傘を観るのは久々ですねぇ。
昔々、仙之助師と二人、太夫と後見の遣り取りを聴かせながら演っていた愉快な高座を思い出しました。
お馴染み土瓶回しでお開き。

◆燕路 『間抜け泥』
練達の高座。
客席を温めてくれました。
いつも思うのですが、燕路師の高座に接すると一気に『古き佳き時代』へ引き込まれます。
流石の出来。

◆しん平 漫 談
正蔵師代演。
事前に代演が判っていましたので『おお、久し振りだなぁ』と期待をしていたのですが、阪急阪神ホテルの「誤表示」の話題からフランス料理漫談へ。
これはこれで大笑いさせて貰いましたけれども、噺を演って欲しかったなぁ。

◆ダーク広和 奇 術
いつものとぼけた雰囲気で、塩、そしてロープ。

◆圓太郎 『浮世床』
姉川の合戦。
もう、とにもかくにも表情と仕種が傑作。
尻文字めいた腰を動かして字をなぞる仕種なども加わり、爆笑の連続となりました。
好高座。

◆小里ん 『天災』
蝶花楼馬楽師代演。
十八番を披露してくれました。
小里ん師の江戸言葉は綺麗ですねぇ。

これは跳ねてからの話なのですが、友人が『小さん師匠が生き返った様だった』と述懐していました。
全く同感。声や口調、仕種は勿論、頭の形まで似て来ましたな。

この仕込み沢山で『労多くして・・・』の部類の噺『天災』を、これだけ巧みに演ることの出来るのは、小里ん師匠とあと一朝師匠かなぁ~。
至芸を堪能。名演。

◆遊平・かほり
お馴染みの根多ながら愉快。
しかし遊平先生がくすぐりを言うと、本当に客席がし~んとしますな。
これも芸ですよ、確かに。

◆正朝 『紙入れ』
たっぷり演ってくれました。
新吉の馴れない様子の描写が巧みでしたねぇ。
鷹揚な旦那の造形が活きて、後味も良し。面白かったなぁ。好演。

◆正楽 紙切り
鋏試し相合い傘、台風、ハロウィン、歌舞伎。
魔女姿の女の子と大きなかぼちゃ、そして遠くにシンデレラ城のハロウィン、お見事。
歌舞伎は勧進帳、弁慶飛び六方。

◆三三 『粗忽の釘』
紙切りの切り屑を片付ける高座返しの小かじさん。
お掃除の最後に、客席へ向けて手で細かな屑を掃く仕種。これには私大変驚きましたが、師匠の三三師、上がって来るなり『弟子の不始末をお詫び申し上げます』。

噺の方はお向かいの家で渾名を『釘さん』、『路地さん』と付けられるなど独自の演出も豊富に盛り込み、滑稽譚を更に進化させた結構なもの。
客席は爆笑の連続。
下げに掛かる場面で、早くも帰り支度か客席のテーブルを畳む音が数回したのを『ばたばた音をさせている場合じゃないですよ』と噺に取り込んで笑いを誘いました。
およそ40分の長講。好演。


小はぜさんの叩く跳ね太鼓を背に『まさに柳家の芝居だったね』、『地味ながら好演が揃った』など語り合いながら家路へ。
いやぁ~、満足、満足。




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花形演芸会 10/19

10月19日(土)第413回 花形演芸会 国立演芸場

主任が浪花節の菊地まどか先生。加えて漫才のU字工事さん、菊志ん師、客演に談春師と多彩な顔付けに惹かれて三宅坂へ。


◆柳家緑太 『やかん』
いつもは繰り返す『愚者』を封印。
時々『愚者』とは言うものの、全体的に品の良い高座となりました。

◆立川こはる 『真田小僧』
高座にへ上がる姿を見て、上手側のお客席から大きな笑い声。
これには同じ客席に座る私も驚きましたが、こはるさんも『初めてですか?』ときょとんとした表情。
『女です』と家元に挨拶へ伺った挿話などを挟んで『真田小僧』。
表情の変化も愉快に好演。
大きな送り手でした。お見事。

◆ふくろこうじ クラウン
ハット、シガーボックス、見えないボール、そしてお客様に手伝っていただいて鞭のコント。
いつもの様にハットをアクセントに高座を進めます。
以前観た時よりも面白さが増した感じ。好高座。

◆U字工事 漫 才
栃木県お国自慢。息のあった遣り取りで客席を沸かせました。
後半のタクシー根多も中々愉快。素晴らしい高座。

◆古今亭菊志ん 『紙入れ』
お馴染みの池袋演芸場の話題から、町内間男の小咄を枕に『紙入れ』へ。
今夜は私、この高座が目当ての一つだったのですけれども、期待に違わぬ好演。
いやぁ、満足。流石の出来映え。

~仲 入~

◆立川談春 『かぼちゃ屋』
『私には帰る故郷もなく、また出演しないのでしみじみと寄席を語ることも出来ない』、『出来るのは落語だけ』。
正確ではないかも知れませんが、こんな一言二言のみで本編へ。
これがまたとてつもなく好い『かぼちゃ屋』。
与太郎の人物造形が素晴らしい。
うむ~、凄かった。至芸を堪能しました。

◆エネルギー コント
エネルギーさん、初見です。
狂言師がファーストフード店でアルバイトを始め、その教育係たる店長が四苦八苦するという珍妙なコント。
面白かったなぁ。
私、高座を観ながら『他の根多もあるのかなぁ?』と思ったりもしていました。
あまりに板についた狂言師振りでしたので、『いつも狂言師の繰り広げる錯誤根多なのかな?』と思った次第。
もう一度観てみたいですね。

◆菊地まどか 『壺坂霊験記』 曲師=佐藤貴美江
浪花節、久し振りです。
よく通る滑らかな歌声で、見事な『壺坂霊験記』。
人情物を朗々と歌い上げました。
好高座。


今夜は国立演芸場ならではの多種多様な香盤。存分に楽しみました。
また、客演の談春師始め出演の皆さん全員が満員の客席に応える熱演。
いやぁ好かった好かった。
耳に残る浪曲の節回しを愉しみながら、霧雨舞う中を家路へ。




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らくご街道 雲助五拾三次 -江戸前- 10/16

10月16日(水)らくご街道 雲助五拾三次 -江戸前- 日本橋劇場

早くもその第七宿を迎えました“雲助五拾三次”。今夜は -江戸前- と銘打って雲助師『庚申待ち』他でご機嫌を伺います。
こうした「廃れてしまった行事、風習」に、噺を通して幾分かでも触れることが出来るのは嬉しい限り。
『そのうち「二番煎じ」なども解らなくなっていくのかねぇ?』など、家人と喋りながら人形町へやって参りました。


◆柳亭市助 『金明竹』
『開演前のご注意』を場内アナウンスした後すぐに高座へ。
市助さんは非常に綺麗な声の持ち主なのですが、天分に更に磨きをかけマイクに乗りやすい発声を工夫しているのでしょう。
よく通る声で『金明竹』。

一回目二回目の言い立ては意識してゆっくりと。
三回目は早口で、四回目の言い立ては更に早く。と緩急の効いた好高座。
後半、旦那が帰ってきてからの場面描写は、時間の関係からか略筆でしたけれども、私、聴きながら『前座さん離れした金明竹だなぁ』と感心しました。好演。

市助さんの美声に聞き惚れてしまったのか、電源を切るのを忘れた方がおいでで
言い立ての途中、着信音が鳴ったのが残念。

◆五街道雲助 『庚申待ち』
茶飯の入ったお櫃を斬って『試し斬り』。
水呑み百姓の娘が貉汁を食ってその後に、大名のお手付となり『女、むじな食って玉の輿に乗る』(女、氏なくして玉の輿に乗る)。
座頭を粉々にした上に、幇間の頬肉を千切っては食べ『たいこもちをちぎってはざとうをつけて食う』。

日本橋馬喰町の宿屋に集まった町内の人達が、話をしながら夜明かしという趣向。
それぞれの話の語り出しが大真面目なものですから、集まった町内の人達が興味津々といった様子で乗り出して聞いていると、地口の下げがつく馬鹿馬鹿しさが愉しいですね。

雲助師の卓抜した話術に、客席のこちらも身を乗り出して聴いておりました。そこで「すとん」と落とす。
落語の原型を聴いている感じ。
案外、こうした風習があることで『作り話をする風俗が生まれ』、面白おかしく聴かせる努力を積み重ねて『落語になった』なんてことがあるのかしらん?と考えながら聴いておりました。

調子に乗った熊五郎が『俺の懺悔を聞いてくれ』と『十五年前、熊谷土手の辻堂で七十の爺さんを絞め殺して五十両奪った』と法螺話。

ここからはお馴染みの『宿屋の仇討ち』と同展開。
『庚申待ち』とは無関係の泊まり客、万事世話九郎(常連のお客様なので庚申待ちの晩でも特別にお泊めした、という設定)が、『熊谷土手で絞め殺され五十両を奪われたのは我が父である』と名乗り出て『明朝、その熊五郎なる親の仇の首を頂戴する』、『熊五郎を逃がした場合は宿にいる者全員を血祭りに・・・』。

話をする人が『宿屋の仇討ち』では町人ですが、こちらは剣術の先生や田舎言葉の老人もいて、その演じ分けも見どころです。雲助師の芸の真骨頂の一端を堪能しました。
極めて愉快な一席。大笑い。

~仲 入~

◆五街道雲助 『三井の大黒』
出囃子は鞍馬。
『後席も江戸前と云うことで・・・』と上野寛永寺鐘楼の柱に四人の名工が彫った龍の挿話。
大久保彦左衛門の推薦でその一本を彫ることとなった左甚五郎。
近くで見ると『ぷっと吹き出すような出来』の甚五郎の龍が、柱として建立されたのを仰ぎ見ると、誠に見事な出来映えであった伝えられる『水呑みの龍』の逸話などを枕に『三井の大黒』。

甚五郎のとぼけた味がよく表現され、また棟梁政五郎の誠実な人間性の描写も相まって、全体的に温かい雰囲気の噺に仕上げました。

私、この噺を聴く度に『大黒様を彫る約束というのが噺の中で唐突に出てくるのが疑問』だったのですけれども
雲助師『手慰みに福の神でも彫って小遣い稼ぎにしな』、『歳の市で売ればいい小遣いになるから』との政五郎の言葉を挟み、
その言葉で『あぁ、そういえば三井さんに大黒様を彫る約束をしたのだったなぁ』と甚五郎が思い出す挿話を入れて、辻褄を合わせてくれました。秀逸。

阿波の雲慶が“恵比寿”を彫り、添えた句が『商いは濡れ手であわの一つかみ』。“大黒”を彫った甚五郎が後をつけて『守らせたまえ二つ神たち』。
お見事。

三井の謝金の一部を『これは奥州行きの路銀に』と『ねずみ』に繋ぐ会話も楽しかったなぁ。けれども、五拾三次ですから仙台は行かないですかね?

二席ともお初の家人は目を見張る展開に大満足とのこと。『上方言葉も上手やなぁ~』。

いやぁ~、今夜も面白かったなぁ~。




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第二回 NBS殺人研究会 10/14

10月14日(祝)第二回 NBS殺人研究会 お江戸日本橋亭

NBS(日本橋)殺人研究会、今夜はその第二回目。
蜃気楼龍玉師『敵討札所の霊験より 七兵衛殺し』、神田松之丞さん『畔倉重四郎より 金兵衛殺し』と前触れされています。

◆解 説 石井徹也 いたちや女将
模造紙に大書した関係図を示しながら、今夜の演目を要領よく解説してくれました。
この解説で『研究会』の雰囲気がぐっと増しますね。

◆神田松之丞 『畔倉重四郎より 金兵衛殺し』
昨夜もここ日本橋亭に出演していたとのことですが、八分通り埋まった客席を見渡して『今夜のお客様は、皆様龍玉師匠のお客様ですね。昨夜の今夜なのですから、私のお客様も観に来てくれてもいいのに・・・』
と、どうも得心の行かぬ様子。
どうしてどうして、家人も私も『講釈を楽しめること』が、この殺人研究会に来る動機づけになっていますよ、松之丞さん!

さて『畔倉重四郎~金兵衛殺し』。
前回の『村井長庵』の読み始めと同じく『大岡政談で有名な名奉行、大岡越前守が生涯に裁いた案件中、“八つ裂きにして余りある奴”、と言わしめたのが、徳川天一坊、村井長庵、そして畔倉重四郎の三人・・・』と入りました。

本当悪いですねぇ、畔倉重四郎。
石井氏、いたちやさんも解説で触れていましたが、快楽殺人的なんですね。
殺しの動機が『殺したいから』、という感じ。
もっとも今夜の殺しは、金兵衛=三百両強奪、千手院和尚=口封じ、と動機があるにはある。
しかしそれが『殺しに付随した言わば“行き掛けの駄賃”めいた結果』、『殺しが先で、後から理由付けした』と感じられる程に殺しが優先しているのです。
殺しに導かれて人生を歩んでいる、そんな雰囲気でした。
迫力満点の高座。特に二人目の和尚殺しの場面描写、怖かったなぁ。
吊し斬り。それも首を落としてしまう。鳥肌立ちました。

それと松之丞さん、今日は手拭い忘れちゃったのですね。
途中、懐に手を入れて何食わぬ顔でその手を釈台へと戻しました。
汗の滴る熱演。お見事。
ぞくっとする事、数度。素晴らしい高座。

~仲 入~

◆蜃気楼龍玉 『敵討札所の霊験より 七兵衛殺し』
根多下ろし、初演なのだそうです。
こちらも寺の場面主体。
主人公の水司又市が高岡の宗慈寺住職、永禅となっておりまして、
そこへ藤屋七兵衛、そして七兵衛女房お梅=元根津増田屋女郎・小増、が登場。
繰り広げられますのが、“女絡みの殺し”。

水司又市=永禅は十三年前に小増を巡り、張り合っていた中根善之進を殺しています。
ここではその小増=お梅の亭主七兵衛を、大鉈で頭を叩き割って殺すという陰惨さ。
龍玉師、疑惑の目で永禅を探る七兵衛と、それを察知して殺しの決意を固めていく永禅、二人の緊迫した遣り取りを素晴らしい描写力で演じました。
表情、声音ともに抜群の出来。

この永禅、七兵衛の二人。殺す側は勿論、殺される側も落ちぶれ果てていて
『悪と悪』というよりも『弱と弱』という雰囲気。
七兵衛は女房お梅を永禅に売ろうと持ちかけたりしますし、
社会の底辺で蠢く者同士の争い事という様に私は受け止めました。

まぁ兎に角、龍玉師、物凄い表情で噺を進めます。
怖かったなぁ。巧みな描写で客席を噺の中へ引き込んでしまいました。


次回、第三回 NBS殺人研究会は来年2月16日(日)開催。
龍玉師匠は談洲楼燕枝作『島鵆沖津白浪より 大坂屋花鳥』、松之丞さんは今夜の続編『畔倉重四郎より 栗橋の焼き場殺し』と触れが出ております。
しかし『焼き場殺し』ってのもまた題名からして凄いですな。
そして昨年今松師、小満ん師の口演を聴いておりますところの『大坂屋花鳥』
二席とも非常に楽しみです。




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古今亭志ん馬師匠逝去

10月8日(火曜日)早朝、前夜書き終えることの出来なかった『志ん輔三夜・仲日』の感想を追記しながら、一つ二つ調べものをとネット検索を掛けましたところ、古今亭志ん馬師匠の訃報がその目に飛び込んできました。ご生涯は10月7日午後2時。

色っぽい雰囲気の面白い噺家さんでした・・・享年55歳。まだお若いのに・・・残念です。

三年半前、2010年(平成22年)3月13日、にぎわい座『名作落語の夕べ』の『文七元結』が、私の接した最後の師の高座だったと思います。
この時は、志ん馬師目当てで席の予約をしました。二番目の師匠である志ん朝師の型を好演されたのをよく覚えています。

その後もしかすると、寄席で観ているかも知れませんが、記憶記録ともに曖昧です。

嗚呼、もっともっと高座を拝見したかった。

ご冥福をお祈りします。

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志ん輔三夜 古今亭志ん輔 三夜連続独演会 千穐楽 10/8

10月 8日(火)志ん輔三夜 第三夜 国立演芸場

三夜連続口演の千穐楽。
志ん輔師『稽古屋』、『黄金餅』、『居残り佐平次』。


◆古今亭半輔 『初天神』
金坊の見せる様々な表情が見事です。
これはかなり工夫している印象。
立寄るお店は団子屋のみの短縮版を高い完成度で演じました。

◆桂才紫 『武助馬』
聞き取り易い声質、はっきりとした口跡の才紫さん。
滑らかな口調で愉快な『武助馬』。好演。

◆古今亭志ん輔 『稽古屋』
素晴らしいの一言。
糸に乗せた清元、喜撰の「世辞で丸めて浮気でこねて・・・」で中手が入りました。
いい喉でしたねぇ。
十八番を堪能しました。

◆笑組 漫 才
文芸漫才『杜子春』。
際どいところで「学問臭」を回避している感じです。
もっと茶利を挟んで「耳学問的展開」でも・・・と思いましたが、これは好みの問題かな。
聴きながら私、リーガル天才・秀才先生の高座を思い出していました。

◆古今亭志ん輔『黄金餅』
端緒の餡ころ餅の件から、抜群の表現力で客席を引きつけました。
隣の西念の部屋を覗きながら独りごちる金兵衛の描写が素晴らしく、まるで私も同じ空間で様子を見ている錯覚に陥りました。

悔やみに来る長屋連中に話の腰を折られながらも丁寧に『うん、お線香あげて』と返す大家さん。この場面は志ん輔師の工夫かしらん?
面白かったですねぇ。こういう図、現実にありますよ確かに。

そして道中付け、大きな中手が入りました。息継ぎ、してました?凄かったなぁ、一息の様な感じ。

木蓮寺和尚の出鱈目なお経も愉しく、速度感溢れる見事な高座。噺の持つ陰惨さを吹き飛ばす勢いがありました。
素晴らしい『黄金餅』。流石古今亭、と言ったところ。

~仲 入~

◆古今亭志ん輔 『居残り佐平次』
『黄金餅』の言い立て場面で、客席の三百人の「気」が伝わってきて、無言のプレッシャーとなった、と口を切りました。
『終わったら拍手するんだから(中手を入れるのだから)、間違えるなよ』という「気」なのだそうです。
間違えはなかったと私は思いましたが、『どうもすみません』と謝っていらっしゃいました。
『もうね、書きたいだけ書いて下さい』
いやいや、素晴らしい言い立てでしたけれども・・・若干の言い淀みを気にされたのかな?

さて『居残り佐平次』。
噺の中で様々な工夫を凝らして仕込んでも、どうも下げで客席がぽかんとしているとのことで、先ずは『下げの解説』から。

本編に入りますと、もうこれは独擅場。
気の好い若い衆を煙に巻く佐平次。
替わって出てきた強面の若い衆に対し、開き直る佐平次。
佐平次という一人の男の持つ複雑な内面を細かく描写しました。凄かった。
実際、佐平次が開き直った場面で客席が息を呑む気配を感じましたね。

更に舌先三寸で座敷の『紅梅さんところの勝っつぁん(霞さんところの勝っつぁん、だったかも知れません)』を取り巻く様子。
この場面は、取り巻かれる側の勝っつぁんの転がされ様をも含め、人間の多面性、心の襞といったものを、志ん輔師ならではの工夫で巧みに現してくれました。

最後半に登場する廓の主人の造形が、これまた秀逸。
落ち着いた風情ながら、何かただならぬ雰囲気、秘めた凄味を、姿勢や表情、仕種、そして声質で存分に描写し、客席に緊張感をもたらしました。
短い場面でしたけれども、素晴らしい描写力でしたねぇ。
ここでこれだけ締めれば、下げの解説抜きでとんとん進めても、今夜の様に大拍手間違いなしと思うのですけれども、志ん輔師はどうお考えでしょう。

掉尾を飾るに相応しい素晴らしい一席、痺れました。名演。
まさに絶品ものの『居残り佐平次』。


緞帳の降りる前にお二方の御贔屓が、花束を持って高座へ駆け寄りました。
驚いた表情の志ん輔師。
その間も拍手は鳴り止みません。


大満足の『志ん輔三夜』。珠玉の九席。
志ん輔師匠、ご苦労さまです。そして、ありがとうございます。
いい会だったなぁ。
この会を支えられたスタッフの皆様にも、観客の一人としてお礼を申し上げます。
心地よい余韻を楽しみながら家路へ。



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志ん輔三夜 古今亭志ん輔 三夜連続独演会 仲日 10/7

10月 7日(月)志ん輔三夜 第二夜 国立演芸場

三夜連続口演仲日。
志ん輔師『片棒』、『お若伊之助』、『子別れ』。
一晩に三席演ずることについて、志ん輔師は昨夜、『一昨年の「三夜」の時には三席演る自信がありませんでした』と明かしていましたけれども、当節は二席の独演会も多くある中、敢えて三席、それも長講を揃えてきた今年の『志ん輔三夜』。
志ん輔師の熱意が伝わって来ます。
さぁ、二日目。


◆古今亭半輔 『無学者』
『やかん』の前半。万物根問。
これからもっと面白くなるぞぉ、というところでお時間。
先を聴きたかったなぁ。好演。

◆金原亭龍馬 『釜泥』
私は古今亭の芝居を観に行くことが多いせいか、二つ目小駒さんの高座には接する機会が何度かありましたけれども、真打、龍馬師匠の高座は初めて。
気持ちの余裕を感じさせる高座。

◆古今亭志ん輔 『片棒』
この噺は、次男坊銀次郎の“祭弔い”場面が盛り上げどころと思います。
まず木遣りを聴かせておいて、手古舞。
次いで山車に載せた赤螺屋のからくり人形の仕種。上半身すべてを使って大きく表現し、客席を沸かせました。
さん喬師、菊之丞師の様に首から上の動き、手の動きで演るのと比べ、志ん輔師の人形振りは、腰までもを大きく捻って演ります。
首から上ではなく、膝から上の動きという感じ。
面白かったなぁ。
更に神輿、そして囃子方の口演。これもお見事。
客席を大いに沸かせました。

こういう噺は勉強していないと掛けられませんね。素晴らしい出来。恐れ入りました。

◆ストレート松浦 ジャグリング
シガーボックス~中国独楽~皿回し、そしてボールジャグリング
今夜の皿回しばかりは『もうこれは間に合わない』と思いました。いやぁ、ぎりぎり。回転が止まる寸前でした。
何回観ても、はらはらドキドキ。

◆古今亭志ん輔 『子別れ』
離れている父、一緒にいる母、それぞれの造形が素晴らしく、子を思う親の心が手に取る様に伝わって来ました。

また金坊が巧いんです、志ん輔師。
その内面を直に表情へ反映させて、客席を噺の世界に引きずり込みました。
流石。

噺の登場人物も良く泣いていましたけれども、今夜は客席でもあちこちですすり泣きの声。
表情豊かな志ん輔師ならではの『子別れ』。存分に堪能しました。
秀逸。

~仲 入~

◆古今亭志ん輔 『お若伊之助』
『仲入の休憩時間は以前10分でしたが、15分にしていただいたら昨夜は全く疲れませんでした』と志ん輔師。
ところが、帰宅してから奥様に『あなた、三席目、疲れてた?そんな風に見えました』
と言われてしまったそうです。
『私ゃ、家帰ってからの方がくたびれちゃった』。
その三席目、今夜は『お若伊之助』。

この噺を聴く際には『根岸御行の松 因果塚の由来』と云う大圓朝師の原作を綺麗さっぱり忘れてしまって、
に組鳶頭初五郎のおっちょこちょい振りを愉しむ滑稽譚として鑑賞していれば良いのではないか、と私は思っています。
従って、前半の導入は地噺でも構わないぐらいの受けとめ方なのですが、流石に志ん輔師。栄屋お若を丹念に描写し、色づいていく娘の変化を目の前へ現してくれました。

私注目の鳶頭初五郎の“行ったり来たり”場面。
長尾に詰められた初五郎が、火の玉の様になって伊之助宅へ飛び込んで行き啖呵を切る。
今夜はここの場面描写、初五郎の威勢が少ぉ~し足りなかった印象でした。
この“最初のねじ込み”が並外れた高っ調子でないとなぁ~。
最初の調子が物凄く、何度も行ったり来たりする内に、次第に調子が下がっていくのが面白さでしょうから。

私、根岸の長尾一角道場と浅草台町の伊之助宅の距離はどれぐらいなんだろう?、と野暮を承知で「台東区根岸」、「浅草橋」と入力してみましたら、3,490m、徒歩41分と出ました。こりゃぁ大変ですね。
これを二往復、およそ15㎞を駆け抜けたなら、お酒など呑まずとも寝てしまいそうです。

その初五郎が長尾に起こされ、お若のいる離れへ伊之助の面体を確かめに行く場面。
ここは客席のこちらも息を殺して覗いている気持ちになりました。緊迫感溢れる見事な描写でした。

この『お若伊之助』、とんとんと~んと、威勢のいい初五郎の啖呵の勢いそのままに最後まで畳み掛けられるならば、結末の気味悪さが薄まるのでしょうね。
繰り返しになりますが、今夜の高座はその啖呵の押しが若干弱かったかも知れません。


跳ねて外へ出ますと、なんと言うのでしょう暑いのか寒いのか・・・
館内の空調も調整が難しい様子でしたけれども、秋ってこんなでしたっけね?と独りごちながら家路へ。




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志ん輔三夜 古今亭志ん輔 三夜連続独演会 初日 10/6

10月 6日(日)志ん輔三夜 第一夜 国立演芸場

つい先だって還暦を迎えられた古今亭志ん輔師匠の連続三夜独演会。
今日はその初日。
志ん輔師『七段目』、『柳田格之進』、『明烏』と根多出しされています。


◆古今亭半輔 『穴子でからぬけ』
髪を綺麗に丸刈りにして登場。
初心に帰ってということでしょうか、古今亭の前座さんが最初に教わるという、『酒の粕』から『親子三馬鹿』そして『穴子でからぬけ』。
気合いの入った高座。面白かったです。

◆古今亭志ん八 『ニコチン~秘密の隠れ家』
配られた冊子では『秘密の隠れ家』となっていましたが、『ニコチン』、『秘密の隠れ家』の二席。
ともに小品ながら、その着想に舌を巻きました。好演。

◆古今亭志ん輔 『七段目』
めくりが繰られ、越後獅子の出囃子が鳴りますと、客席にさっと緊張感が走りました。この瞬間が私、たまらなく好きです。

いつもの様にふらりふらりと登場した志ん輔師、独演会らしく15分ほど雑談。
志ん朝師匠の亡くなられた2001年10月1日は、ここ国立演芸場の初日だったとのこと。
寄席を休むかどうしようかと迷っていた志ん輔師ら一門の弟子達の中で、総領弟子の志ん五師が『師匠ならば必ず「寄席へ出ろ」と言う筈だ』と、寄席優先を決断し、一同に伝えたそうです。
そんな話、こんな話、TVの『落語小僧』収録風景や宮崎県の『子供落語塾』(地元出身の歌春師の落語会が基になった養成塾で、今や芸術協会が後援しているそうです)の話題などを枕に本編へ。

芝居見物から帰ってきて、親子喧嘩の一悶着。
その後、二階へ上がった若旦那。
大旦那の小言を伝えに来た定吉を相手に、忠臣蔵七段目を演じます。
本身を手挟む若旦那。刀を腰に帯びた刹那、凄く嬉しそうな顔になるんです、ほんの一瞬なのですけれども。
この細かい演出には感心しました。

糸が鳴り、芝居真似が始まりまして気づくのは、定吉の芝居真似が如何にも子供のそれなこと。巧くやればやれるところを、意識して子供の芝居真似。好かったなぁ。
定吉のお軽に斬りかかる場面で激しく附け打ちが入り、一気に下げへ。お見事。

◆柳家紫文 『お馴染み』
冊子に『お馴染み』としてありますので、その通りに記載。
週末は沖縄で仕事だったそうで、昨日は台風の影響で飛行機が全便欠航。
『今日も飛ぶかどうかと案じていましたが、飛んでくれてほっとしました』
『座席に着いてイヤホンから志ん輔師の『子別れ』が聞こえてきて、今度はぎょっとした』
まさにお馴染み、『火付盗賊改方長官の長谷川平蔵が・・・』と始まるいつもの三味線漫談で客席を大いに湧かせました。

◆古今亭志ん輔 『明烏』
外出先から帰宅した時次郎に、父の日向屋半兵衛が小言の場面。
父が言い回しに苦心しながら、なんとか時次郎に解って欲しい、という気持ちで喋っている。卓抜した描写でした。
すらすらっと喋るのではなく、考えながら喋る、その様子が実に良く現れていました。

つい先だって9月14日開催“らくご・古今亭”でも志ん輔師の『明烏』に接しています。
http://70kirakuan.blog.fc2.com/blog-entry-175.html

あの時も書きましたが
時次郎の『お女郎なんか買ったら瘡ぁ掻きます』との一言で、源兵衛、多助が振られる羽目になったのにも拘わらず、
当のご本人は『良いお籠もりでございました』では、本当『何で昨日の内にその了見にならなかったの?』って言いたくなりますよね。

この『何で昨日の内にその了見にならなかったの?』は実に名言。真に迫っていました。
時次郎の成長を一言で表現している様に思います。

この場面での『昨日と今日』、『源兵衛、多助と時次郎』という『時の流れ』そして『人と人』二本の軸それぞれの対比。(因みに志ん輔師の描く源兵衛と多助は、それほど悪染みていません。遊びに詳しい町内の人といった風情)
志ん輔師苦心の演出、本当に巧みな組み立てですねぇ。
素晴らしい完成度の『明烏』。名演。

~仲 入~

◆古今亭志ん輔 『柳田格之進』
志ん輔師の高座に何度か接しているお客様ならば、この『柳田』を掛ける度に、『あまり演りたくない』、『どうも好きになれない』という師の言葉を耳にしている訳ですが・・・
その『演りにくい噺』を一席づつ、この三夜で掛ける。つまりそれは(志ん輔師は明言しませんでしたけれども、ご贔屓ならば先刻ご承知の)『柳田格之進』、『お若伊之助』、『黄金餅』の三席。
いずれも古今亭十八番です。

私、この三席とも何回か師の『演りたくない』との言葉とともに聴いておりますが、どの高座も『苦手意識を感じさせる様な出来』ではありませんでした。
これはつまり『お家芸伝承の難しさ』を客席へ伝えてくれているのだろうと思っています。
http://70kirakuan.blog.fc2.com/blog-entry-82.html
http://70kirakuan.blog.fc2.com/blog-entry-133.html

さて『柳田』。
言うことなしの出来。
元来素晴らしかった柳田と娘お絹との会話は、更に磨きが掛かりました。
また、柳田と万屋源兵衛の友誼も巧く描けていましたねぇ。

柳田方での五十両の難詰め場面。
番頭徳兵衛が以前と比べまして、大分品が良くなりました。
また悋気丸出しという雰囲気も薄れています。
こちらの方が、私は好みかなぁ。

離れから出てきた金の包みを、小僧が主人へ手渡す場面。包みを渡された万屋源兵衛の手が、その重みで『おっ』と一瞬下がる。
このあたりの描写は志ん輔ならではですね。

今夜は下げで充分に溜めました。
碁盤を真っ二つに斬り、その刀を右手に天を仰ぎ『絹・・・』と声にならぬ声を発する柳田。
『・・・相済まぬ』という言葉を飲み込んでいる様子がよく判ります。
溜めに溜めて、映画の最終場面のような雰囲気を醸し出しました。
そして、古今亭伝承の決め台詞。
『堪忍の成る堪忍は誰もする、成らぬ堪忍するが堪忍、柳田の堪忍袋の一席』とひと息で。
ここ好きだなぁ。
息を吐きながら『・・・堪忍袋の一席』、そして辞儀。
上下の客席に満遍なく挨拶をしながら緞帳を降ろしました。


大満足の志ん輔三夜。
明日、明後日も楽しみです。




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国立10上昼 10/5

10月 5日(土)国立演芸場 昼席

予約受付の二日前に発表された国立演芸場10月上席の香盤は、主任三笑亭茶楽師、仲入神田松鯉先生と眩いばかり。
『鑑賞日程が忙しくなるけれども、何とか観たいなぁ』と三宅坂へ駆けつけました。


◆三遊亭遊松 『初天神』
金坊とお父っつぁんの会話が生きていました。前座さんとは思えない達者な運び。
登場人物の気持ちになって演っているのが、見てとれました。
もしかしたら、遊松さん、本当にお腹がすいていたのかな?

◆三遊亭小笑 『悋気の独楽』
女性の描写が巧いなぁ。ただ、発声が気になりました。
あれが地の声なのでしょうか。

◆山遊亭金太郎 『目黒のさんま』
これはもう手の内。
季節の噺をさらりと。好演。

◆ぴろき 漫 談
抱腹絶倒の爆笑高座。
これを書いている今でも、思い出して笑ってしまいます。
面白かったなぁ。

◆三遊亭遊之介 『ふぐ鍋』
少し早めながら、今日の気温ならば違和感は全くありませんね。
前半の幇間と旦那の場面が若干引っ張り加減で、冗長かとも思いましたけれども、後半を綺麗にまとめました。
好高座。

◆神田松鯉 『赤穂義士外伝~天野屋利兵衛』
吉良邸討ち入りの密議を知らされ、何か役に立ちたいと申し出た赤穂藩お出入りの商人、天野屋利兵衛。
城代家老大石内蔵助の依頼により、忍び道具の調達に尽力します。
この怪しい道具の仕入れが奉行所の知るところとなり、捕縛され厳しい拷問を受けますが、忍び道具の依頼主の名を明かすことはありません。
当年五歳の息子七之助までもが拷問に掛けられようとするところ、事情を察した奉行により疑いは不問となります。
『天野屋利兵衛は男でござる』の台詞も有名な、義士外伝~天野屋利兵衛。
いやぁ、堪能したぁ~。

~仲 入~

◆小泉ポロン 奇 術
見事な読心術。不思議な雰囲気を愉しみました。

◆三笑亭夢花 『天災』
啖呵が切れて好い感じ。
と思っていたのですが、最後半の鸚鵡返し場面で八五郎の声が大き過ぎました。
噺を壊しちゃった。
前半は好かったのになぁ~。

◆東 京太・ゆめ子 漫 才
お元気です。息のあった遣り取りで雰囲気を変えてくれました。

◆三笑亭茶楽 『明烏』
十八番を掛けて来ました。
なんといっても日向屋時次郎の造形が素晴らしい。
寄席の尺に刈り込んだ短縮版ながら、その巧みな描写で客席を吉原へ連れて行ってくれました。
好かったなぁ。お見事。


跳ねて霧雨の中を大劇場への坂を歩きながら家人が、『素晴らしい明烏だったけれども、あの「花魁が両の掌で私の一物をぐっと握って」という直接的表現がどうも・・・』
と言いますのを『昔の型を再現してくれたんだョ』と宥めながら家路へ。

仲入松鯉先生、主任茶楽師、期待に違わぬ素晴らしい高座。そして代演のぴろき先生も面白かったなぁ。
大満足。




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白酒ばなし 桃月庵白酒独演会 10/3

10月 3日(木)白酒ばなし 桃月庵白酒独演会 にぎわい座

今夜もまた爆笑譚を期待して、にぎわい座へやって参りました。

開場時間よりも少し前に到着。入場可能との案内をいただき、エレベーターで三階へ。
入場しましたらロビーでいたちやさんが、雲助師『雲助、悪名一代』、白酒師『白酒ひとり 壺中の天』、ともにサイン入りの自伝本を頒布中。
私も早速、『白酒ひとり 壺中の天』を求めました。
お客様のご希望が多かったのでしょう。その後間もなく、品切れになったとの声が聞こえました。人気ありますなぁ。


◆柳家緑太 『狸札』

◆桃月庵白酒 『喧嘩長屋』
先ずは本の話題から。次いで大相撲の満員御礼の垂れ幕を枕に本編へ。

私、初めて聴く噺です。
調べてみましたら元は上方噺で、東京では柳家金語楼師の口演記録が残っている様です。

店子の夫婦喧嘩の仲裁に入った大家さん。仲裁どころか喧嘩に巻き込まれる羽目に。そのまた仲裁人が・・・という喧嘩の連鎖。

夫婦喧嘩を発端に長屋中へ喧嘩が広がり、果ては町内挙げての喧嘩騒動。
そうなると余所から喧嘩好きが詰め掛けて来ますが・・・という展開。

落語的滑稽味の溢れる噺なのですが、演り手がなく廃れてしまったのもまた頷けると言えば頷けます。
今夜も、米国人宣教師が喧嘩に巻き込まれて行く場面で、客席が明らかに引いたのが素人目にも判りました。
白酒師の卓越した滑稽描写あらばこそ、再び高座へ掛ける事が出来た噺、と言えましょう。好演。

◆桃月庵白酒 『尿瓶』
一旦下がり、再登場。
道具屋の符帳を枕に振って『尿瓶の花活け』。
昨年12月の“らくご・古金亭”で聴いて以来です。
宿へ戻った侍が、花器と信じている“尿瓶”に、威儀を正し丁寧にまた大真面目に菊の花を活けるその姿。
綺麗な所作でしたねぇ。秀逸。
この場面の描写をこうしてきちんとしますと、より面白さが際立ちます。
客席爆笑の一席。お見事。

~仲 入~

◆柳家右太楼 『権助提灯』

◆桃月庵白酒 『錦の袈裟』
何度聴いても面白い、自家薬籠中の鉄板根多ですね。
今夜もまた客席をひっくり返してくれました。
与太郎の目の表情が素晴らしいなぁ~。
流石の出来。恐れ入りました。


跳ねて家人と『面白かったねぇ』、『大笑いしたね』など語り合いながら家路へ。
いやぁ、愉しかったなぁ~。




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第50回人形町らくだ亭 10/2

10月 2日(水)第50回人形町らくだ亭 日本橋劇場

今年2月の『第46回』以来、暫く振りの“人形町らくだ亭”。
『第50回記念特別公演』の今夜は、五人のレギュラー勢揃いでご機嫌を伺います。


◆林家けい木 『十徳』
少し早めに上がったのかしらん。
扉を開け放しロビーの喧騒が聞こえる状態。そしてお客様がどんどん入場着席する中の高座。
さぞ演りにくかろう、と気の毒なぐらいでしたけれども、落ち着いて噺を進め笑わせどころではきちんと客席を沸かせました。
好演。また聴いてみたいなぁ、けい木さん。

◆春風亭一朝 『魂の入替え』
人が眠りにつくとその人の魂が抜け出して、という如何にも落語的奇想天外なお話。
抜け出した魂が見世物小屋の若い衆に拾われますが・・・
一朝師、珍しい噺を面白おかしく演ってくれました。

◆柳家さん喬 『片棒』
寄席ですと次男坊の“山車”の件あたり、からくり人形の仕種で笑わせて下がることも多いこの噺。
今夜はたっぷり、本来の下げまで。
愉快な高座。

◆五街道雲助 『厩火事』
志ん生師直伝の男女の縁に纏わる小咄“帯がほどけてます”、“シャツと猿股”などを枕に本編へ。
お崎さんの造形が見事。怒ったり拗ねたり、本当に喧しい女性でしたね。
仲人の旦那が落ち着いた風情で、これもまた“それらしい”感じ。
兄貴じゃぁなくて旦那ですものね。
下げへ繋がる場面では、お皿を手の平へ乗せ太神楽よろしく“手の平返し”の外連。

雲助師匠、今夜はいつもより大袈裟に“くさく”演った様な気がします。客席爆笑の一席。流石ですねぇ。

~仲 入~

◆古今亭志ん輔 『紙入れ』
女将さんのその色っぽいこと。
新吉を手玉に取る様子をたっぷり。
雲助師に引っ張られた訳でもありますまいが、志ん輔師も今夜は表現がいつもより大きかった感じ。
新吉の“肩を揺すらないで下さい”と哀願する姿、面白かったですねぇ。

『紙入れ』を忘れた新吉ですが、紙入れに言及したのは一度だけ。
翌朝の旦那との会話では『手紙』で通しましたけれども、これは何か意図があったのかな?

私、この噺の後味の良し悪しは、旦那の描き方で決まると思っています。
志ん輔師、実に爽やかな雰囲気で下げへ持っていきました。巧いなぁ。

◆柳家小満ん 『二十四孝』
淡々とした口調で噺を進め、滑稽譚をさらりと口演。
小満ん師の渋い話芸を堪能しました。
好高座。


今夜の特別公演、五人の師匠それぞれが、その持ち味を存分に発揮し素晴らしい高座を見せてくれました。
大満足の人形町らくだ亭、次回は12月17日(火)開催。主任雲助師、十八番の『鰍沢』と発表されています。楽しみだなぁ。




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プロフィール

喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)

Author:喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)
喜洛庵寄席桟敷へお越しいただきまして、ありがとう存じます。
寄席、落語会、舞台などの鑑賞記を綴って参ります。

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