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らくご街道 雲助五拾三次 -秋- 9/17

 9月17日(水)らくご街道 雲助五拾三次 -秋- 日本橋劇場

雲助五拾三次、第十八宿 -秋-
『じゅうぴゅう、じゅうぴゅうと焼けて』の一節を聴いた時、危うく涎を垂らしそうになった覚えがあります『目黒のさんま』他、と前触れされています。


◆五街道雲助 『目黒のさんま』
先週の土曜日、9月13日に三十三回忌を迎えた、師匠の十代目金原亭馬生師の思い出話から。
馬生師の口癖かつ一門の門風は『何でもいいんだよ』。
細かい部分には頓着しない師匠だったそうです。
また『兎に角、噺を一切浚わない師匠』で、噺を間違える事も多くあったとのこと。しかも、その間違えを認めないで言い抜けてしまう。

『文七元結』で「佐野槌」と最初に言っていたのに、次の場面では「角海老」となり、また次の場面は「佐野槌」へ戻る。
不思議に思った当代馬生師が楽屋で早速聞いたところ『佐野槌は後年代替わりをして角海老になったんだから、あれでいいんだ』。

紀ノ国屋寄席で『金明竹』を掛けた際、三回の言い立てをそれぞれ違う言い回しで演ってしまい「質問コーナー」で『言い立てが違っていたが?』と聞かれると『名人と称された圓喬師の型は言い立てが三回とも違うので、今日はその型で演りました』。

雲助師が兄弟子の今松師と二人でお家芸の『火焔太鼓』の稽古をしてもらった時、『五十両』、『百両』ではなく誤って『五両』、『十両』と教えて『親爺は三百両で演ってるけど、太鼓なんてそんなに高値な訳がないから、三十両でもいいんだ』。

まぁまぁ頑固な師匠だったのですなぁ。外見からはそう見えませんでしたけれどもねぇ。
しかし『子別れ』の金亀騒動も含め、間違えを認めないのみならず言い訳がもっともらしいのが愉快ですねぇ。
頓知頓才に優れた師匠だったのでしょう。

あとこれは私の “客席からの思い出” なのですが「したり顔」と言うのでしょうか、何かこう聞く者を納得させる表情が上手でしたね。
そしてあのもっともらしい声の抑揚が加わりますから、丸きり嘘でも本当っぽく聞こえちゃうのでしょう。

こんな話、あんな話から『月と星』、『米炊き』、『紅葉鯛』など定番の小咄を枕に本編へ入って行きました。

この噺、殿様を茶化した感じに造形する演出に遭遇することがありますが、雲助師はあくまで“世間知らずながら愚か者ではない、威厳を備えた若殿” という感じの造形。噺にぴたり嵌まっています。

さんまの焼けている様子を実に美味しそうに描写しますなぁ、それと立ち上る煙を強調して肝心の “さんまの匂い” を客席に連想させつつ言葉でも伝えました。

口止めをされているのに、思わず口をついて出る “さんま” の一言。御親類筋からの食事接待の当日を一日千秋の思いで待つ殿様の様子。
このあたりの場面、好きですねぇ、私。
お見事な秋の一席、堪能しました。

◆五街道雲助 『安兵衛狐』
下がらずに『この “目黒のさんま” は、私は余り演りませんけれども師匠は秋になるとよく掛けていました』と回顧。
『下げの言葉 “さんまは目黒に限る” の調子は、殿様が知ったかぶりをしてのものなのか、それとも感嘆しての言葉なのか、師匠に聞いておけばよかった』
『ちょうど今、末広亭の9月中昼は師匠の追善興行で弟子一同が勢揃いしているので、皆に聞いてみたのですが、その部分を気にしている弟子は一人もいませんでした』
『まぁ “何でもいい” のかも知れません』

手前に二軒長屋、路地を挟んで向かいに四軒長屋、と説明しながら本編へ。

お弟子さんの馬石師もよく掛け十八番にしているこの『安兵衛狐』、それを意識してか『狐の目がきょとんとしていて噺家の馬石の様だ』と茶利を挿れたのは愉快。
非常に軽い調子で噺を進め、客席を笑わせてくれました。好高座。

~仲 入~

◆五街道雲助 『業平文治漂流奇談』~発端
鞍馬の出囃子で上がりました。
下谷御成街道に屋敷を持つ堀丹波守様の家来で、三百八十石取りの侍浪島文吾の息子、浪島文治郎またの名を業平文治が主人公。
尤も文治は士分ではなく、訳あって町人として本所業平に住まっています。
圓朝噺なのですね。私、初めて聴きます。
今夜は長い噺の発端部分。

登場人物は次の通り。
浪島文治郎=業平文治
その母(名は不詳)
文治の子分、番場の森松
浮草のお浪
その亭主、国蔵
生薬屋番頭、九兵衛
湯屋、杉乃湯番頭(名は不詳)


鬼退治の桃太郎の様に、悪党を成敗し従えて自らの協力者にする、そんなところが今夜の『発端』の筋立て。
上に名前の出ている “番場の森松” もそうした経緯で起居を共にしている様子。元は博打打ち?かな?

主人公の文治は、滅法力が強く七人力を称し、元は侍ですから剣術も一流、気力豪胆にして曲がった事が大嫌い。

まぁ町内に睨みを効かせている “自警団の親方” と言えば当たらずとも遠からずかしらん。

生薬屋の番頭九兵衛が、入れ込み湯で女の身体を触ったり背中をくっつけたり悪戯を繰り返してくるので、元は茶屋女で前科者のお浪が亭主国蔵と計らって九兵衛とその主家、さらに仲裁に入った文治をも強請に掛けようとする。

その一部始終を『湯屋の板の間』、そして翌々日の『文治宅』の二場で描きました。

雲助師独特の演劇的色彩の強い、見事な高座。
私、こういう雲助師も大好き。
続きを早く聴きたいなぁ。
大迫力の言葉の応酬、長講40分余。素晴らしい高座でした。


跳ねて家人と『三席とも軽い噺で揃えると思ったけれども “業平文治” とは意外中の意外だったね』
『他で演る機会も中々ないでしょうに、あれ程の長い噺、難しい台詞を浚ってきてくれたのね』
『勉強家の上に努力家』、『噺家の鏡』
など喋りながら家路へ。

いやぁ、満足満足。





Tag:落語会・寄席  Trackback:0 comment:2 

Comment

佐平次 URL|
#- 2014.09.18 Thu11:37
好い落語会の連続で、そりゃあ、満足満足でしょう^^。
小満んの「殿さま」にも同じ威厳がありますね。
喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう) URL|佐平次様
#- 2014.09.18 Thu12:24
佐平次さん、こんにちは。
矢張り武家の表現は、武家の威厳を出して欲しいですね。
特に「お殿様」ですし。
鷹揚な描写が間延びしてしまうと好くない感じがします。

小満ん師の『盃の殿様』、また聴きたくなりました^^
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喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)

Author:喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)
喜洛庵寄席桟敷へお越しいただきまして、ありがとう存じます。
寄席、落語会、舞台などの鑑賞記を綴って参ります。

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