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第58回人形町らくだ亭 1/26

 1月26日(月)第58回人形町らくだ亭 日本橋劇場

今年最初の人形町らくだ亭。
今夜の主任は古今亭志ん輔師、演題はお家芸の『お直し』。
柳家小満ん師『鉄拐』。
他に話題の立川談幸師が『二番煎じ』で登場。そして神田きらりさん出演と前触れされています。


◆神田みのり 『宮本武蔵 狼退治』
小柄な女流さん。
今夜は高座返しも勤めました。
疳高い第一声にふっと苦手意識が頭をもたげましたが、達者な調子で読み進む高座を聴くうちに打ち消されていきました。
狼の遠吠えも面白く、中々の出来。

◆神田きらり 『寛永三馬術 梅花の誉れ』
お馴染みの四国丸亀藩士曲垣平九郎登場。『出世の石段』。
緊迫の上り場面は流石の描写力。
前講とは年季が違うとばかりに、迫力満点の高座。楽しめました。
客席から大きな送り手。

◆立川談幸 『二番煎じ』
今年から芸術協会へ移籍した談幸師。
そのことには一切触れず、江戸町火消には『へ』、『ひ』、『ら』、『ん』の代わりに『百』、『千』、『万』、『本』の各組があったことなど蘊蓄を枕に本編へ。

番小屋に町内の皆が揃った場面から。
従って『おぉ、寒い寒い』と手を摺り合わせながら番小屋へ三々五々やって来る描写は丸々割愛されました。
このことで “この晩の身を切る様な寒さ” が客席へ充分に伝わらなかった印象です。

柳家伝統の二手に分けて回る演出。
この型には欠かせない『心張り棒をかっちゃいましょう』の台詞も入りました。

回っている間は勿論、番小屋へ戻って来てからも登場人物は『寒い』と繰り返すのですが・・・
仕種や表情が伴わない為でしょうか、これが伝わって来ません。
寒さの描写が充分でないと、酒を呑み鍋をつつく場面も入り込めないのですね。
食いしん坊の私には珍しく、ここも今一つ共感出来ませんでした。

『 “二番煎じ” だから薄く演るのかなぁ?』などと、くだらない事を考えているうちに下げ。
何か淡々とした薄味の高座。

◆柳家小満ん 『鉄拐』
小満ん師独特の古川柳を散らしての枕。これ好きなんです、私。
『貼り交ぜの屏風ひつじの五目飯』なんてのが最初でしたか。
枕でさり気なく李白と陶淵明を、そして勿論 “酒” を仕込んでおいて、さぁ始まり。

全編を活き活きとした会話で紡いだ、非常に魅力的な高座。
鉄拐も張果老も愛嬌のある造形。くだけた感じが面白い。
小満ん師、地の喋りのときにも軽い雰囲気で、軽妙洒脱な独特の世界に連れて行ってくれました。
印象に残る好高座。お見事。

~仲 入~

◆古今亭志ん輔 『お直し』
さぁ、今夜の私の “注目高座” 。
お家芸をたっぷりと聴きたいところ。

『待ってました!』の声がそこここで上がる中、志ん輔師が高座へ登場したのは8時42分。
さっと『昔はって言うってぇと、吉原というところは遊女三千人御免の場所・・・』と切り出しましたので
『時間も時間だし、いきなり本編に入るのだな』と思いましたが然に非ず。

『御免の場所てぇぐらいですから・・・凄いもんです』と言って暫く間を置き、『神田に連雀亭という若手専門の寄席を作ったのですが・・・』

昨年10月11日に開場しお客様にも出演者にも好評だった連雀亭。
順調な滑り出しだったところが、暮れも押し詰まった12月25日に保健所の指導が入った結果、設備不備の指摘を受け、正月五日から休席し設備の手直しを余儀無くされたとのこと。

志ん輔師、また関係の方々の東奔西走の結果、保健所、そして消防の指導に基づいた整備が完了し、この1月20日に営業許可を得、翌日の21日にお目出度く再開の運びとなったそうです。

客席は志ん輔師の『再開出来ました』の言葉に大きな拍手。
『本当、関連する様々な役所の方達の “何とかしてあげたい” との思い遣りを込めた温かいお気持ちがありがたかったです』と志ん輔師。

志ん輔師の話では、入場されたお客様の一人が『不備がある』と保健所へ報告した事が発端だった様ですね。
何かトラブルでもあったのかなぁ?
何等かのトラブルがあったならば、ネットの発達したこの世の中ですから、落語ファンの耳目に触れない訳は無いとも思われますが・・・。

『御免の場所(幕府公認)』の言葉から志ん輔師、暮れから正月へかけての様々な手続き並びに設備工事の手配など、『公的機関(お上)から承認を得る為の奮闘の日々』を連想された様子。
大変だったのですね。

と、噺の方は若干の脱線がありましたけれどもすぐに本編へ戻り、張見世の女郎がお茶を挽いている場面から。
慰める妓夫、涙で応える女郎の遣り取りにしんみり。
“鍋焼うどん” が好い感じで効いていました。

色事の噂が広まり、情けある主人の計らいで女は遣手に。また妓夫は通いの若い者となって働く。
暗く悲惨な噺の中、唯一明るく調子を張る場面。ここは志ん輔師ならではの名調子。

小金が入り遊びへ博打へと流れる亭主の様子。またその為に女房が廓で板挟みとなる様も丁寧な紡ぎ。
そして、いよいよ “蹴転” の切見世を手に入れようという場面へ。

『女はどうするのさ』
の女房の問いに口ごもりながら
『女はお前がやんねぇな』
と返す亭主。
この辺りの一連の会話の迫力は凄かったなぁ。

『あたしゃお前さんの女房だよ。女房がそんなことして、お前さん平気かい?』
『平気じゃねぇさ、あたりまえだろう。平気な訳がねぇ』
『平気でいてくれなけりゃ困るんだよ!』
と腹の据わった女房の一言。
ここの遣り取りは、また一段と素晴らしかったですねぇ。痺れました。

羅生門河岸の場面では、酔っ払いの造形がまたお見事。
非常な現実味を帯びた演出で、客席をぐいっ、ぐいっと噺へ引き込んでくれました。
この時の亭主の様子がまた傑作で、もう気が気でない心情を “これでもか!” とばかりに押しての描写。
三者三様の表情、口調。
酔客と女房それぞれが腹に無いことを言い合い、どこか気の好い亭主がこう首を伸ばしている様子。
志ん輔師の豊かな表情が活きました。

そして下げの場面。
喧嘩というより亭主はもう生きているのも嫌になった打ちひしがれよう。何もやる気が無くなってしまった態。
聴いているこちらも、哀しく切ない気分になりました。悲惨だなぁ。

哀しみの中の細い蝋燭の光、といった感じの夫婦の労り合い。
心に沁む素晴らしい一席。長講45分。

下げて緞帳が降りるまで、いや降りきった後も少しの間客席は大きな拍手が続きました。
丁寧に辞儀を返しながらこれに応える志ん輔師
素晴らしい『お直し』、堪能しました。


跳ねて外は傘の要らぬ程ながら地面は濡れています。
情味溢れる『お直し』を聴いて幾分高揚した気分のまま、小走りに家路へ。






Tag:落語会・寄席  Trackback:0 comment:2 

Comment

佐平次 URL|
#- 2015.02.03 Tue11:24
これは落語研究会(この日だったのです)より良かったようですね。
お直しをちゃんとできるのは凄いです。
喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう) URL|佐平次さん、コメントありがとうございます。
#SFo5/nok Edit  2015.02.03 Tue12:10
佐平次さん、こんにちは。
あっ同日だったのですね、うっかりしていました^^
この日の志ん輔師『お直し』は名演と言っても差し支えない高座でした。
少し大袈裟な演出でしたけれども、私には大変嵌ったのですね。
女房の台詞『平気でいてくれなけりゃ困るんだよ!』の迫力には
本当に圧倒されました。
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プロフィール

喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)

Author:喜洛庵上々 (きらくあん しょうしょう)
喜洛庵寄席桟敷へお越しいただきまして、ありがとう存じます。
寄席、落語会、舞台などの鑑賞記を綴って参ります。

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